研究課題
応力で結晶掌性がスイッチ可能なCoTeMoO6について、前年度に引き続き磁化・c軸電気分極測定を行い、H(磁場)||[110]とH||[1-10]について対称性から期待される通り誘起分極の符号が逆となること、ならびに、これらの方向の磁場印加によっても誘起分極に大きな変化を伴うスピンフロップ転移が起きることを見出した。前年度の結果と合わせて、この物質が応力で結晶掌性のスイッチが可能な物質としては初めて、電気磁気効果を示すことが実証された。二軸性結晶では円二色性や旋光性による掌性の判別が難しいが、電気磁気効果の符号は掌性も依存することから、これらの結果はこの種の結晶の掌性の新しい判別方法を提供するものである。他に応力による掌性のスイッチが可能な物質の候補として、Cu2Te2O5Cl2の単結晶試料を合成した。この物質の結晶点群は-4であるが、低温らせん磁気相ではキラル極性な磁気点群2であることが期待される。線二色性の温度依存性の測定から、この物質がらせん磁気相で確かに2軸性結晶であることを明らかにした。また、c軸電気分極測定を行い、H||[110]とH||[1-10]で磁場誘起分極の符号が逆であること、母相が点群-42mのらせん磁性体とは異なり、H||[100]でも磁場誘起分極変化が生じることなどを確認した。このように、この物質のらせん磁気相は応力や電場で掌性をスイッチ可能な対称性を有することが実証できた。さらにLaFeO3単結晶試料を作成した。この物質はab双晶壁が強弾性分域壁であることが応力下X線測定により報告されており、またc軸に自発磁化を持つ。強弾性分域壁と磁壁に結合があれば応力による磁化反転可能性があることから、c面薄片試料を作成し、線二色性とファラデー効果を用いてab双晶壁と磁壁の同時観察に成功した。応力印加を試みたが、現段階ではab双晶壁の駆動には至っていない。
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Physical Review B
巻: 95 ページ: 180410
https://doi.org/10.1103/PhysRevB.95.180410