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2016 年度 実施状況報告書

イオン液体合成法による新しい超伝導体・フラストレート磁性体の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K13831
研究機関東京大学

研究代表者

廣井 善二  東京大学, 物性研究所, 教授 (30192719)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードイオン液体合成 / 物質探索 / 強相関電子系 / 超伝導体 / フラストレート磁性体
研究実績の概要

本研究は、強相関電子系における物質探索にブレークスルーをもたらすことを目的として,これまでほとんど用いられたことのないイオン液体合成法により,新しい超伝導体やフラストレート磁性体の合成を行うことを目指している.イオン液体は化学的・熱的に安定な有機液体であり,様々な物質を安定に溶かすことができるため物質合成の新しい反応場として注目を集めている.本研究では,イオン液体合成法を確立し、様々な物質系に適用して新しい強相関物質研究の舞台を創成することが最終目標となる.
本研究では以下の3つの目標を設定している.①イオン液体合成法の確立と既知物質の合成、②5p電子超伝導体Te4[BixCl4]の物性評価、③新物質探索である。
平成28年度の研究において、研究開始のために大学院生1名をドレスデン工科大学に派遣し,イオン液体合成法を習得させた。同大学のRuck教授はイオン液体合成のパイオニアの1人であり、合成法に関して重要な知見を得ることができた。超伝導体Te4[BixCl4]を実際に合成した研究者はすでに他に移動しており、その共同研究者からノウハウを得て合成を行った。結果として、同物質の単結晶作製には成功したが、キャリアドープされた超伝導体の合成には至らなかった。残念ながらその原因は分かっておらず、大学院生は帰国後、当研究室においてさらなる合成実験を行っているが成功に至っていない。しかしながら、イオン液体合成法の技術習得には成功しており、今後の研究の進展が期待される。よって、①の目的は概ね実現し、②に関しては成功していない。平成29年度においては目標③を遂行するために研究を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度の研究において、研究開始のために大学院生1名をドレスデン工科大学に派遣し,イオン液体合成法を習得させた。Te4[BixCl4]の単結晶作製には成功したが、キャリアドープされた超伝導体の合成には至らなかった。残念ながらその原因は分かっておらず、大学院生は帰国後、当研究室においてさらなる合成実験を行っているが成功に至っていない。しかしながら、イオン液体合成法の技術習得には成功しており、今後の研究の進展が期待される。

今後の研究の推進方策

今後の研究展開として、イオン液体合成を用いた新物質探索を行う。特にフラストレート磁性体としてスピン1/2カゴメ格子反強磁性体をターゲットにする。そこでは、通常のネール秩序ではなく、最低温でもスピンが液体状態に留まるスピン液体状態や高次の自由度を有するトポロジカルテクスチャーをもつ特異な磁気秩序が期待されている。実際の物質系において活発な研究が展開されているが、理論モデルを再現する物質の合成には困難がつきまとう。イオン液体合成法により得られたカゴメ格子反強磁性体[NH4]2[C7H14N][V7O6F18]は、最近になってカゴメ格子の三角形が大小となるブリージングカゴメ格子磁性体として注目が集まっており、その基底状態はギャップレスのスピン液体であると主張されており興味深い。本研究では、同様の物質系で新しいカゴメ格子磁性体の合成を目指す。一方、イオン液体合成法による物質探索が旨くいかない場合に備えて、平行して従来の水熱合成法の改良を行う。われわれのグループでは最近、水熱輸送法による良質単結晶育成の技術を確立し、これにより極めて純良な銅鉱物の結晶育成に成功している。これを駆使して、銅酸化物カゴメ格子反強磁性体の物理を開拓するための単結晶育成を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画であったイオン液体合成法による5p電子超伝導体Te4[BixCl4]の合成に関して、物質合成には成功したが、超伝導化に至らなかった。その超伝導性評価のために良質な単結晶を多量に作製する予定であったが、これができなかったため物品費に残額が生じた。

次年度使用額の使用計画

今後の研究展開として、イオン液体合成を用いた新物質探索を行う。特にフラストレート磁性体としてスピン1/2カゴメ格子反強磁性体をターゲットにする。イオン液体合成法により得られたカゴメ格子反強磁性体[NH4]2[C7H14N][V7O6F18]は、最近になってカゴメ格子の三角形が大小となるブリージングカゴメ格子磁性体として注目が集まっており、その基底状態はギャップレスのスピン液体であると主張されており興味深い。本研究では、同様の物質系で新しいカゴメ格子磁性体の合成を目指す。一方、イオン液体合成法による物質探索が旨くいかない場合に備えて、平行して従来の水熱合成法の改良を行う。水熱輸送法による良質単結晶育成の技術を確立し、これにより極めて純良な銅鉱物の結晶育成を行う予定である。そのための物品費および試薬代として余剰金を有効活用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] ファラデー回転法によるS=1/2カゴメ格子反強磁性体CdCu3(NO3)2(OH)6・H2O(CdK)の全磁化過程の観測2017

    • 著者名/発表者名
      大熊隆太郎, 中村大輔, 嶽山正二郎, 広井善二
    • 学会等名
      日本物理学会第72回年次大会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市待兼山町)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-20
  • [学会発表] 正四面体クラスター磁性体毒鉄鉱KFe4(AsO4)3(OH)4nH2O(A = alkali metal, H3O)の磁性2017

    • 著者名/発表者名
      鳥巣崇生, 大熊隆太郎, 高野幹夫A, 廣井善二
    • 学会等名
      日本物理学会第72回年次大会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市待兼山町)
    • 年月日
      2017-03-17 – 2017-03-20

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公開日: 2018-01-16  

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