研究課題/領域番号 |
16K13833
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
笹川 崇男 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (30332597)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ダイヤ分子 / 強誘電性 / 非線形光学効果 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンドの結晶構造に特徴的な炭素のカゴ型クラスターを骨格とし、炭素の末端が水素で終端された化合物群「ダイヤ分子」は、バルクダイヤモンドの優れた物理的特性、熱的特性、機械的特性を受け継ぎつつ、ナノのサイズや特徴的な形状、高い対称性に起因する新奇物性を発現する可能性を秘めた炭素系ナノテク材料として注目されている。本研究では、ダイヤ分子の化学修飾も活用して、更なる高機能化について検討を行った。 着目したのは、ダイヤ分子は室温以上の温度から固体状態に凝集していること、分子形状が楕円状に近いことから固体相中でも回転しやすいことである。そこで、終端水素を電気陰性度の大きな酸素やハロゲン原子に化学置換することで、双極子モーメントを付与した極性ダイヤ分子について理論計算科学的な検討を行うとともに、その知見を活かして実験的な検証を進めた。 ハロゲン化およびケトン化されたダイヤ骨格が1つのダイヤ分子については、第一原理計算から双極子モーメントの大きさの予測を定量的に行った。また、ケトン化およびハロゲン化(塩素、臭素、ヨウ素)した計4種類の極性ダイヤ分子を合成・精製・単結晶化することに成功し、それらを用いて室温以上から低温(~80K)までの誘電率の温度依存性の評価も完了した。 誘電率測定では、結晶中の分子回転に起因する転移を反映した急峻な変化(誘電率異常)を検出することに成功し、その温度が置換基に依存した分子の回転障壁の大きさで説明可能なことを見出した。この結果は、結晶中の回転障壁を制御・設計することで室温以上での強誘電性の発現も目指せることを示唆し、今後の研究の進展を期待させるものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単純な構造をもつダイヤ骨格が1つのダイヤ分子については、極性を持たせた場合の全容を理論計算科学的にも実験的にもほぼ明らかにすることができて、今後の研究の方向性も定めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
この1年間で確立した研究の進め方を、化学修飾の自由度も増すダイヤ骨格が2つ以上のダイヤ分子について適用して、配向分極による室温以上での強誘電性の発現を実現するための検討を効率的に進める。 更に高機能化の可能性を拡げるために、単一分子および純物質の特性に加えて、異種のダイヤ分子を固溶させた合金的な系も対象として、双極子モーメントの多体効果で生まれる新たな誘電相の創出にも挑戦する。予備実験の結果として、極性と無極性のダイヤ分子固溶系において、ダイポールグラスやリラクサー的な挙動を示唆する誘電特性が観測されていることから、物質系の組合せや固溶組成を系統的に変化させながら、純物質では発現しない機能の開拓を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での成果発表を計画していたが、学内行事との重複により日程調整ができずに断念したため。
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次年度使用額の使用計画 |
課題の成果発表にふさわしい国際会議の開催が本年度もあるため、旅費として使用予定である。
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