研究課題/領域番号 |
16K13836
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清水 康弘 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (00415184)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究では、ダイアモンド窒素欠陥中心を検出器とした光検出磁気共鳴法を用いた物性測定に関する研究を推進する。これまで、磁気共鳴技術は10GPa以下の計測に限られてきたが、新たにダイアモンドアンビルセルと組み合わせることで、汎用的な超高圧下での磁化測定、および核磁気共鳴実験を開発することが本研究の目標である。本研究の目標を達成するためには、検出器の感度向上が必須である。そこで、本研究ではまず、ダイアモンド中の窒素欠陥濃度を精密に評価するために、新たなスピン格子緩和率の計測方法の開発に取り組んだ。名古屋大学理学研究科において、光検出磁気共鳴に必要な測定系を新たにセットアップし、国内外の協力研究者との共同研究により、高感度の光検出磁気共鳴に成功した。さらに、電子スピン共鳴を窒素欠陥上の電子スピンと欠陥上のスピンにおいて独立に行い、欠陥濃度を評価した。欠陥濃度を系統的に変えながら、それらの相関関係について局所的に調べる技術を新たに開発した。その結果、欠陥スピン濃度と窒素欠陥の緩和率に線形の相関があることを見出し、高感度のセンサ開発の鍵となるパラメータ評価を行うことが初めて可能となった。また、欠陥スピンを励起状態に保つ2重共鳴法を用いることで、スピンースピン緩和時間を劇的に増大させることに成功した。この技術は、今後量子コンピュータの開発に関わる重要なものであり、物性物理分野だけでなく、量子情報科学分野でも普及すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
100GPaにおよぶ超高圧下磁気共鳴法を実現する上で必要となる光検出磁気共鳴に関する基本的な技術開発に取り組んだ。上述のように、これまでの検出感度を10倍程度更新する新たな光検出磁気共鳴技術を開発することに成功した。本研究で得られた成果は、インパクトの高い学術論文への投稿を準備中であり、今後の幅広い学術分野への波及効果が期待できる。本研究開発は、挑戦的萌芽研究としての当初の計画を上回り、予想以上の研究の発展性を見出すことができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
光検出磁気共鳴の基本的な技術を短期間に確立できたことで、迅速に超高圧下の物性測定を行うことが可能となった。今後、さらなる検出感度の向上を目指して、試料の最適化を行うとともに、高圧セルの開発に取り組む。高圧下では、検出波長の大幅のシフトが予想されるが、検出器を新たにセットアップするなどして対応する。また、加工の困難なダイアモンドを用いた検出だけでなく、より汎用的な検出系の設計にも取り組む。液体ヘリウム温度までの実験を可能にするための、光学用クライオスタットはすでに準備してあるため、直ちに本研究の達成目標のひとつである超伝導体の物性測定に関する実験に取り組むこと可能である。本研究の期間内に、新たな物性測定の実験手法の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展状況に合わせて、必要な物品を随時購入する必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに高周波信号発生器およびパルス増幅器を購入する。
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