研究課題/領域番号 |
16K13838
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
花咲 徳亮 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70292761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱電変換 / 無機物質 / 有機分子 / 電気化学 |
研究実績の概要 |
熱電変換効果の変換効率を向上させるには、ゼーベック係数および電気伝導率を増幅するとともに、熱伝導率を低減する事が有効である。熱を伝達させるフォノンを散乱する上で、ラットリングに活用が有効である。有機分子には、様々な分子内振動モードがあり、もしこれらのモードをラットリングに利用できれば、効率良く熱伝導率を低減させる事ができる。そこで、本研究では、無機層状物質に有機分子を挿入する事を試みた。最初に着目した物質は、SnSeという層状化合物である。この物質は最高の熱電変換効率を示す事が最近報告されていた。まずSnとSeの原料を混ぜて石英管封入し、ブリッジマン法を用いて母物質SnSeの単結晶を作製した。次に、ヘキシルアミンという有機分子を電気化学的に導入する事を試みた。しかし残念ながら、SnSe結晶の試料形状に何ら変化は起きず、有機分子が入らなかった。次に、SnSe2という無機化合物に有機分子を電気化学的に導入する事を試みた。まずSnSeの場合と同様にブリッジマン法で母物質のSnSe2を作製した。電気化学的方法で合成中にSnSe2が膨張する所を目視で確認でき、有機分子を導入されている事が示唆された。実際、X線回折を測定して層間方向の格子定数も大きくなった事を確かめた。合成した試料について電気伝導率とゼーベック効果を測定したが、電気伝導率の大幅な上昇と、ゼーベック係数の低減を観測した。これは有機分子の導入に伴い、キャリアが注入された事によると考えられる。この結果、電力因子を向上させる事ができた。今後は、キャリア注入量を精密に制御して作製した試料を用いて物性を調べ、熱電変換効率を向上させていく必要があるとともに、有機分子がどのように挿入されているのか、その構造についても精査していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱電材料として有望な無機物質に有機分子を導入する事を目標にしていたが、実際に有機分子を導入する事ができ、熱電効果等の物性測定する事が出来たので。
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今後の研究の推進方策 |
無機物質に有機分子を導入する事ができた。今後は、有機分子の導入量を精密に制御した試料を作製して、電気伝導率や熱電効果の測定以外にも熱伝導率の測定を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ある程度他の予算(運営費等)で賄う事ができたため、2016年度は使用額が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は、研究で用いる原材料の購入費用、出張実験や学会発表のための旅費等に使用する予定である。
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