物理的な確率過程を含むダイナミクスを活用することにより機械学習における新規アルゴリズムを創出するという取り組みをこれまで行ってきた。今年度は、量子系のダイナミクスに注目して、量子アニーリングにおける有限の量子ゆらぎを利用した最適化手法について検討を行った。またその量子系のダイナミクスにおける性質について検討を加え、いわゆる量子速度限界が、古典系の確率過程についても制限を加えるものであることを見出した。この成果は挑戦的萌芽研究の結実としてふさわしく、次の課題へとつながるものとなる。古典確率過程は機械学習のアルゴリズムにおいて頻繁に利用され、またその性能評価においても活用される手法である。その古典確率過程に対して不変的な不等式が存在する事実は、機械学習アルゴリズムに対しても不変的な不等式を与えることへとつながる。残念ながら終了年度内にその機械学習アルゴリズムに対する不等式を導出するには至らなかったが、引き続き次の課題として検討を加える。 量子系のダイナミクスを活用して、汎化性能が引き上がるという結果を得ることに成功した。この効果は、従前の汎化性能と正則化項の関係として取られられるかどうか、その点についても未解決問題として残った。引き続き今後の課題として検討することで量子機械学習の枠組みを形成する礎として本研究成果を据える。強化学習や実際上汎化性能の向上が求められる舞台での実応用例の検討も開始したり、今後の研究課題がいくつも創出されて、概ね良好な成果を上げることができた。
|