本研究では、量子光学の技術に基づき、単一ナノ粒子のレーザー光中での重心の振動運動を計測することで、その組成を非破壊で分析し、組成毎に試料を分級する技術を創成することを目指している。前年度までの研究で、3種類の材質について大気圧下で光捕捉したナノ粒子を100Pa程度以下にまで移行できることを見出していたが、この他の材質については数1000Pa程度で消失してしまうために、真空下での振る舞いの観測ができないことが問題となっていた。 そこで、平成30年度の研究では、次のような2通りの研究を進めた。(1)粒子の重心運動が充分周期的に観測できる100Pa程度以下の圧力において、真空下で保持できる2種類の材質からなる粒子の振動周波数をそれぞれ別々に測定し、材質を判別できるかどうかを調べる。(2)その他の多くの材質について、背景圧力が下がると光捕捉されたナノ粒子が消失するメカニズムを追究し、より低い圧力まで移行できる条件を見出す。 (1)の実験では、実際に2種類のナノ粒子の振動周波数が、5%程度異なることを示すことができたため、本研究の根幹をなす粒子選別の原理実証はできたといえる。ただし、理論的には、振動周波数が20%程度異なることが予想されていたため、実験で得られた値とのずれについてさらに実験・考察が必要であると言える。 (2)の実験では、元々入手した時点での材質の純度に加え、ナノ粒子を真空槽に導入する際に混入する不純物の影響も考慮する必要があることが判明した。この点について改良を加えた結果、さらに3種類の材質について、100Pa以下の圧力までナノ粒子の光捕捉を維持することが可能となった。
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