研究課題
前年度に引き続き,理化学研究所の極低温型イオン蓄積リングRIKEN Cryogenic Electrostatic ring (RICE)内に,電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源で生成したN2O+イオンを蓄積し,峡線幅色素レーザーによる回転分光を実施した。回転分光スペクトルは,N2O+分子のA2Σ+←X2Π2/1 (000)-(200)遷移にともなう前期解離フラグメントをレーザー波長の関数として計測することで観測した。真空中に孤立した分子の回転状態がどのように緩和するかをリアルタイムに観測するため,レーザー照射のタイミングを入射直後(250マイクロ秒)から200秒程度まで変化させ,回転スペクトルの形状を比較した。また回転スペクトルのシミュレーションソフトウェアpgophorを用い,分子の内部温度を見積もることを試みた。イオンを長時間リング内に閉じ込めた測定を行う際には,測定時間が長くなるだけでなく,リング内のイオン数も減少するためにS/N比が格段に悪化する。これを軽減するため,色素励起用のNd:YAGレーザー(532 nm)を従来のフラッシュランプ式10 Hz繰り返しから,ダイオード励起式100 Hz繰り返しへとアップグレードした。これにより計測レートを10倍に向上することに成功し,長時間蓄積データを安定的に取得できるようになった。以上のように,孤立分子の振動回転状態分布をレーザー分光により刻々と追跡して観測するという目的を達成し,ミリ秒から分オーダーの超低速時間分解分光という手法を実現することができた。結果の解釈についてはより統計精度の向上および長時間蓄積データの取得が必要となるが,このための手法改良についても期間内に完了している。これらの研究成果については国際会議招待講演等で発表したほか,プロシーディングス1報が投稿済みである。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Review of Scientific Instruments
巻: 88 ページ: 033110~033110
10.1063/1.4978454
http://www2.rikkyo.ac.jp/web/nakano/