研究課題/領域番号 |
16K13863
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小澄 大輔 熊本大学, パルスパワー科学研究所, 准教授 (70613149)
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研究分担者 |
原 正大 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (50392080)
瀧尾 進 熊本大学, 沿岸域環境科学教育研究センター, 教授 (60188109)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光合成 / 超高速現象 / プラズモニクス / 単原子層ナノシート / 紅藻類 / エネルギー移動 |
研究実績の概要 |
植物・藻類・細菌類における光合成機能は、自然が創出した最もエネルギー変換効率の良いナノバイオ集積フォトニックデバイスである。このような生体分子の一分子分光計測は、その本質的な電子・エネルギー輸送現象解明に向けた急務な課題である。一方、アボガドロ数個の分子を計測するマクロ測定とは異なり、一分子計測では得られる信号強度が極限的に微弱であるため、適用範囲が高収率な発光性材料に限られてきた。本申請では単原子層ナノシート上に単離調整された単一光合成超分子を配置し、単原子層ナノシートによるプラズモン増強効果により微弱な一分子による信号を増強し、マクロ光学系を用いた単一光合成超分子の励起状態ダイナミクスの観測を目指す。 平成28年度の研究において小澄(代表者)は、時間相関単一光子検出 (TCSPC)モジュール及びシングルフォトンカウティングアバランシェダイオードを導入し、高感度かつ高い時間分解能を持つ蛍光寿命測定装置の構築を行った。構築した装置では10ピコ秒程度の時間分解能を持ち、単一光子レベルでの検出感度が達成された。試行測定として光合成色素であるクロロフィル分子の蛍光寿命を計測したところ、極限的微弱励起条件下でも数分程度で良質なデーターが得られることが確認できた。瀧尾(分担者)は、紅藻の大量培養に着手し、分光計測に必要な試料を提供するための準備を行った。原(分担者)は、グラフェン及び半導体特性を持つ単原子層ナノシートの作成を行い、それらの電気特性を計測することで、良質なナノシートであることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、平成28年度中に高感度検出を行える蛍光寿命計測装置の構築が行えた。試行測定として光合成色素であるクロロフィル分子の蛍光寿命を計測したところ、極限的微弱励起条件下でも数分程度で良質なデーターが得られることが確認できた。(研究代表者)。研究分担者らも光合成単一超分子計測を実現するための単原子層ナノシートの作成及び紅藻類由来光合成器官の調製を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究では、上半期において単原子層ナノシート上に紅藻から単離調整した光合成器官を配置し、平成28年度に構築した高感度蛍光寿命計測装置を用いて、光合成単一超分子の計測を行う。単原子層ナノシート上に配置された光合成単一超分子の確認は、原(分担者)が所持している原子間力顕微鏡で行う。 平成29年度の下半期には、100フェムト秒光パルスを用いたポンプ・プローブ分光及び縮退四光波混合計測と単原子層ナノシートによるプラズモニクスを組み合わせることで、蛍光計測を行うことなく、光合成単一超分子計測を実現する。ポンプ・プローブ分光及び縮退四光波混合計測システムはすでに稼働状態にあるが、単一超分子の観測を行うために、試料への集光系の改良を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度行った時間相関単一光子検出法を用いた蛍光寿命計測装置の構築において、現有の光学素子を用いて想定以上の計測結果が得られ、新たな光学素子購入を必要としなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に予定しているポンプ・プローブ分光及び縮退四光波混合分光計測装置を用いた単一超分子計測導入の際に、現有設備の改良の必要性が予測されるため、不足した光学素子の購入費とする。
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