研究課題
植物・藻類・細菌類における光合成機能は、自然が創出した最もエネルギー変換効率の良いナノバイオ集積フォトニックデバイスである。このような生体分子の一分子分光計測は、その本質的な電子・エネルギー輸送現象解明に向けた急務な課題である。一方、アボガドロ数個の分子を計測するマクロ測定とは異なり、一分子計測では得られる信号強度が極限的に微弱であるため、適用範囲が高収率な発光性材料に限られてきた。本申請では、単原子層ナノシート上に単離調製された単一光合成超分子を配置し、超短光パルスを用いた分光計測を行う。単原子層ナノシートによるプラズモン増強効果により微弱な一分子による信号を増強し、マクロ光学系を用いた単一光合成超分子の励起状態ダイナミクスの観測を生体温度条件下で実現することを目的とした。平成28年度に、微弱光を検出するため、時間相関単一光子検出システムを構築し、単一光子レベルで検出可能な分光計測を実現した。平成29年度は、研究分担者 (瀧尾教授 熊本大学・くまもと水循環・減災研究教育センター)の協力の下、紅藻類より巨大光合成アンテナ色素タンパク複合体フィコビリソームを単離調製し、そのエネルギー伝達ダイナミクスを単一光子レベルで解明した。得られた色素たんぱく複合体は、低分解能ながら電子顕微鏡で70 nm程の大きさを持つことが確認されており、単一超分子分光を十分行えるサイズであることが確認できた。単原子層ナノシートを用いたプラズモニクスを分光に適用するためには、より大きなサイズのナノシートを作成することが今後の課題になる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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