研究課題/領域番号 |
16K13864
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
高木 清二 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (80372259)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 真正粘菌 / 三次元ネットワーク / 三次元細胞行動 |
研究実績の概要 |
1)三次元構造物内の粘菌の観察および解析方法:昨年度,光トモグラフィーを試みたが原理的に解決困難な問題が生じるため,三角測量を基礎とした三次元再構成方法に方針転換し実験方法と解析方法の開発を行った.構造物内に粘菌を這わせたサンプルの多視点撮影は,ステッピングモーターによる回転とシャッターをマイコンボード制御により同期させて行った.三次元再構成方法は以下の通りである.まず粘菌部分を色にもとづいて抽出し,隣り合う視点の2画像間において一方の画像を基準とし,粘菌のある部分についてもう一方の画像における対応部分を検出した(ステレオマッチング).これにより,カメラ視野空間内における座標を求める.ステレオマッチングのアルゴリズムは,部分画像の相関により検出するブロックマッチングと二画像間の各ピクセル値を元にエネルギーを定義しエネルギー最小条件により検出するグラフカット法を比較した.その結果,二視点間の再構成データを元に構造物内の粘菌の存在する場所を概ね決定することが可能となった.ただし,死角により位置を同定できない部分も少なからず存在し,より良い観察方法と処理方法,および視点を増やすことを検討する. 2)多点を結ぶネットワーク形成:前年度は三次元構造物内における4点を結ぶ管ネットワーク形成の実験を行ったが,いずれのサンプルも平面図形に展開できるネットワーク構造を形成した.そこで更に多くの点を結ぶネットワークを形成させる実験を行った.構造物内にも餌場を設置するために8個の部分に分割可能な構造物を作成した.まずは構造物全体に粘菌を這わせた後,構造物を分割し内部に餌場を設置した後,構造物を組み直すことで,粘菌は再融合し最終的に8点の餌場を結ぶネットワークの形成が可能となった.現在上記の観察および解析方法の改善をはじめとし,ネットワーク解析に取り組んでいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に検討していた三次元解析方法の変更による遅れが課題採択当初の計画における次年度の遅れとなっている.ただし,今年度当初に立てた計画内容の解析については概ね順調に遂行している.実験が遅れがちとなる原因としては,頻度は高くないが隣接する造船所の塗装作業に伴う有機溶剤が風向きによって研究施設へ流れてくることによる生物材料へのダメージがある.造船所の作業計画に合わせて外気が入ってこないように工夫しているが避けるのは困難な状況である.
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今後の研究の推進方策 |
三次元再構成の解析方法がほぼ固定したため,今後,三次元空間で形成される多数のノードを結ぶネットワーク形成の実験および解析を進め,三次元空間内に特有のネットワーク構造の形成について調べる.例えば位数5の完全グラフは平面グラフではないが,粘菌が三次元空間内に平面グラフに展開できないネットワークを形成する様になるノード数(エサ場数)を調べ,餌場数の増加にともなうネットワークの変化を定性的および定量的に明らかにする.さらに,三次元構造物の空間密度や構造を変化させ,粘菌の移動速度や移動様式を比較することで移動方法の変化と機構について調べる.また,忌避刺激の三次元的な配置に応じた粘菌の忌避行動変化から粘菌の空間認識能力について調べる.これらを通じて粘菌の三次元空間における細胞行動の特徴を明らかにすることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は322円と少額でありこの額の使用目的がなかったため.次年度に物品購入の消費税分に当てる.
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