研究課題/領域番号 |
16K13865
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
栗田 玲 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20579908)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 可視化技術 / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
結晶成長において、雪のように樹枝状なパターン構造を形成する場合がある。樹枝状構造は結晶の高品質化の阻害、電池のショートの原因になるなど問題点が多く、この形成メカニズムの理解はさまざまな分野にとって重要である。液体から結晶に転移する場合、結晶化に伴う潜熱により結晶成長界面の温度が上昇する。さらに、結晶化は密度変化を伴い、物質輸送が行われる。結晶成長界面では、界面エネルギーや過冷却度の変化や速度場による熱の輸送など、図1のようにさまざまな効果がお互いに及ぼしあう非平衡現象である。これまで結晶成長過程における温度場や速度場を可視化した実験研究もほとんどなかったため、理論的な解析は困難な状況にあり、提案されたモデルも実験的な確証は得られていない。そのため、結晶成長界面における温度場や速度場を実験的に明らかにすることは非常に重要である。 本研究課題では、局所的な速度場と温度場を可視化する手法を開発する。現在、温度場・速度場を同時に可視化技術として温感液晶カプセルを用いた方法がある。カプセルの中にコレステリック液晶が封入されたものであり、液晶のらせん周期の温度依存することを利用している。この手法は、カプセルが約20マイクロメートルと大きく、空間解像度が低く、また、カプセルそのものが局所的な速度場を乱してしまう可能性がある。そこで、申請者は楕円体カプセルを用いて高解像度の可視化に改良することを試みる。一軸方向は長いため、らせん構造への閉じ込めサイズの影響は少なくなり、また、楕円体は速度場に対し、断面積が小さい方向に配向するため、高解像度の速度場の可視化が期待される。この手法を用いて、結晶成長界面の温度場や速度場を観察し、結晶成長において、どのように温度場や速度場が関わっているのかを明らかにする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温感液晶カプセルは、コレステリック液晶をカプセルに閉じ込めたものである。コレステリック液晶は、光の波長程度の長さのらせん構造を形成する。らせん構造の周期長は、温度に敏感であり、散乱される光の波長が変化するため、温度センサーとして用いることができる。また、カプセルは約20マイクロメーターと大きく、カプセルそのものも見える。そのため、カプセルの動きを追うことで、その場所の流れ場を見ることができる。よって、このカプセルは速度場と温度場を同時に可視化することができる。 我々は温感液晶カプセルを用いて、温度場・速度場が絡み合った現象である熱対流を可視化することに成功し、対流中における異常挙動を見つけることに成功した。本研究課題である結晶成長を調べるためには、空間分解能や速度分解能をあげる必要があり、今後の研究の課題となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在の温感液晶カプセルは約20マイクロメーターと大きい。カプセルの大きさ分だけ、速度場や温度場は平均化されてしまい、結晶成長の界面付近の速度場や温度場を可視化するには大きすぎる。また、小さい速度のとき、カプセルの追従性も問題がある。 そこで、今後はカプセルの楕円化に取り組む。楕円にすることで速度場に対する追従性や空間分解能はあげることができる。コロイドでは高分子フィルムに閉じ込め、引っ張るという手法で楕円にすることが可能であるという報告があり、今回はその方法を使って楕円にする予定である。楕円になったカプセルの性質を調べるとともに、結晶成長ダイナミクスを調べる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
カプセルの購入や観察システムの構築に助成金を用いたが、想定した金額よりも安価に組み立てることができた。そのため、次年度の学会発表やオープンジャーナル費用に使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
本研究課題は、結晶成長という国内だけでなく海外において大きく展開されている分野である。申請者らの本研究課題における研究結果は大きなインパクトを持つものであるため、国内学会、国際会議において発表することを考えている。世界中の人があつまる大きな会議であるアメリカ物理学会での発表を考えている。
|