研究課題/領域番号 |
16K13870
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西村 太志 東北大学, 理学研究科, 教授 (40222187)
|
研究分担者 |
矢部 康男 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30292197)
井口 正人 京都大学, 防災研究所, 教授 (60144391)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ひずみ計 / 火山 / 噴火 |
研究実績の概要 |
本年度は、おもに簡易ひずみ計の感度評価と設置場所の調査を行った。 火山のひずみ観測用に開発中の簡易ひずみ計の機械的増幅率は,定荷重の条件下では,ひずみ検出部の端部と中心部の直径比から16倍と期待される.しかし,埋設状態では定荷重の条件が満たされないので,増幅率はこれよりも小さくなると予想される.そこで,有限要素法(FEM)で埋設状態をモデル化して,感度を評価した。斑レイ岩中に掘削した直径130mmの孔井に簡易ひずみ計をセメント埋設した状態を模したFEMモデルを作成して,遠方に印加した変位によって生じる岩盤のひずみとひずみ計検出部に生じるひずみを計算した。その結果、岩盤に1 ppmの短縮ひずみが生じている時,ひずみ検出部中心の表面(ひずみゲージを貼る場所)では,軸方向に2.45 ppmの短縮,接線方向には0.81 ppmの伸長が生じ,簡易ひずみ計の機械的増幅率は2.45倍となることがわかった.また、岩盤のヤング率を10 GPaに下げる(ポアソン比は0.25のまま)と,岩盤のひずみが1 ppmの短縮のとき,ひずみ検出部中心の表面では,長さ方向に1.35 ppmの短縮,接線方向に0.44 ppmの伸長が生じ、岩盤のヤング率が小さいとひずみ計の機械的増幅率が低下することがわかった.これは,岩盤のヤング率を低下させたのに伴い,より小さな遠方応力で,岩盤に一定の大きさ(1 ppm)の短縮ひずみを生じさせることができるためであると推察される。ひずみ計の設置場所は、京都大学防災研究所火山活動研究センター有村観測点脇の空き地スペースとした。これは、ひずみ観測装置が設置してあること、掘削の可能であること、観測機材の設置および維持が比較的容易であること、などからである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、ひずみ計の設計と製作を行うことを計画していた。設計については、有限要素法を利用した数値計算にもとづき、孔井に設置した状態でのひずみ計の感度計算を行うことができた。また、予測最大感度よりも小さくなったが、その要因も推察することができた。しかしながら、ひずみ計の試作まではできなかった。これは、おもに計画時に想定していた教育研究活動に加えて、別の業務が入ったためである。来年度は十分時間を確保し、計画の遅れを取り戻す予定である。 一方、ひずみ計の設置場所は、予定通り、複数の候補地から掘削地の選定を終えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度に予定していたひずみ計の制作と、ひずみ計の設置を行う。 ひずみ計は、金属箔ひずみゲージを貼り付けた、直径1cm、長さ5cmのステンレス棒3本を互いに120度ずつずらして鞘管に納めた、単純な構造のものを作成する。ステンレス棒の軸方向と周方向に互いに直交するように配置した2枚1組のひずみゲージ2組を、互いに向かい合わせになるように貼り付け、この4枚のゲージでブリッジ回路を構成する。また、データロガーに接続可能となるようにオペアンプ等を利用した電子回路を自作する。 観測場所に5mほどの孔井を掘削し、その底部にひずみ計を設置する。データロガーを用いて連続観測を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ひずみ計の製作が遅れたため、物品費の使用が予定より少なくなったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度、ひずみ計の製作を行うため平成28年度に積み残した予算を使う。また、孔井掘削を行うため、平成29年度分に計上していた予算も合わせて利用する。
|