研究課題/領域番号 |
16K13871
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミュオグラフィ / 火山 |
研究実績の概要 |
本研究は我が国が世界に先駆けて発展させてきた「素粒子ミュオンを用いた巨大物体の透視技術(ミュオグラフィ)」を素地に火山の高解像度3次元断層撮影(トモグラフィ)を最終的に可能にする基礎観測技術を開発するものである。我が国は、2006年世界で初めてミュオグラフィの実証観測に成功した後も目覚ましい成果を上げ続けているため、この分野では、現在のところ世界をリードする立場を堅持している。今後も引き続き、世界が我が国の成果に追従するという地位を確保していくためには、我が国オリジナルの研究成果をベースにさらに魅力的な研究成果を次々と創出し続けていかなければいけない。本研究において開発される基礎技術はこれまで、火山体という厳しい環境下では、観測装置の設置場所、搬入経路、また電源の確保などの観点から地上展開するのが極めて困難であった多点ミュオグラフィ観測の常識を根本的に塗り替え、対地高度が極めて低い空中から火道近傍をホバリングとタクシングを繰り返すことで、周回観測を行い、実効的に多点ミュオグラフィ観測を実現させる新たな技術に直結するものである。 平成28年度は並列小型軽量ミュオグラフィ観測装置を製作すると同時に空中でミュオグラフィ観測装置の時間情報、位置情報、角度情報を記録するシステムを構築した。さらに、ミュオグラフィデータをる時間情報、位置情報、角度情報を用いて補正するプログラムを作成した。 一点からの空中ミュオグラフィ測定を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は以下の4点について、開発及び観測を実施した。①平成27年度までに開発が進んでいる、並列ミュオグラフィテレスコープのデータ取得システム、電子回路システムの技術を流用して、実効有感面積1平米程度、角度分解能0.1sr程度の並列小型軽量ミュオグラフィ観測装置を製作した。②全地球測位システム(GPS)、デジタル水準器、コンパスを組み合わせた、ヘリコプター内に設置されたミュオグラフィ観測装置の時間情報、位置情報、角度情報を記録するシステムを構築した。③ミュオグラフィデータを②で得られる時間情報、位置情報、角度情報を用いて補正するプログラムを作成した。④実際の火山を対象として、一点からの空中ミュオグラフィ測定を実施した。対象とする火山は雲仙平成新山、山体の厚みは数百mであり、期待される透過ミュオンフラックスの変調から1割の密度差(2割のフラックス差)を検出するのに、必要な測定時間の検証を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に実行した火山体の空中ミュオグラフィ実証試験の結果に基づき、「空中ミュオグラフィ測定法」の技術改良の検討を行う。具体的には、高解像度ミュオグラフィ観測装置の導入による観測精度向上等のメリットを評価する。X線断層写真撮影法に相当するミュオグラフィ断層撮影法(トモグラフィ)の実現性について定量的な評価を行う。研究成果をとりまとめる
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度に開始したミュオン透視観測において、当初予期し得なかった新技術の新規条件が出現することにより研究方式が複数存在することが判明したため、いずれの研究方式を採用するかが研究開発の効率化等の観点からその正否を左右することとなるため、その決定には十分な検討が必要であり、その結果、研究方式の決定に不測の日数を要する場合があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実行した火山体の空中ミュオグラフィ実証試験の結果に基づき、「空中ミュオグラフィ測定法」の技術改良の検討を行うことに使用する。具体的には、高解像度ミュオグラフィ観測装置の導入による観測精度向上等のメリットを評価することに対して使用する。
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