本研究は我が国が世界にリードする「素粒子ミュオンによる巨大物体の透視技術(ミュオグラフィ)」を発展させ高解像度3次元断層撮影へとつなげる「空中ミュオグラフィ観測法」を開発するものである。医学分野において既に実用化されているX線断層撮影法と同じく、火山の断層撮影には多方向からの観測が必須であるが観測装置の設置場所、輸送経路、また商用電源の確保などの観点から火山周囲にミュオグラフィ観測点を多数展開することは極めて困難である。本研究では、ヘリコプター内部のような、角度や位置が常に変動する限られた形状・サイズの空間でも実施可能な空中ミュオグラフィ撮影法を開発することで、火山の高解像度3次元断層撮影(トモグラフィ)を最終的に可能にする基礎観測技術を開発する。
そのために、複数の小型装置を空間形状に合わせて自由に配することで、スペースを有効的に活用し、かつ実効的に検出面積を向上させる並列ミュオグラフィテレスコープをヘリコプター内に実装し、ヘリコプター内部のような、ロール、ピッチ、ヨーが常に変動する限られた形状・サイズの空間でも実行可能な空中ミュオグラフィ撮影に必要な基礎技術を開発した。この開発により、対地高度が極めて低い空中から火道近傍をホバリングとタクシングを繰り返すことで、周回ミュオグラフィ観測を行えるようになり、これまで、火山体という厳しい環境下では、観測装置の設置場所、搬入経路、また電源の確保などの観点から地上展開するのが極めて困難であった、多点ミュオグラフィ観測の限界を超え、3次元断層撮影を目的とした様々な方向からのミュオグラフィ観測を実効的に実現させる新たな技術が確立された。
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