研究課題/領域番号 |
16K13876
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小田 啓邦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (90356725)
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研究分担者 |
佐藤 雅彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50723277) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | SQUID顕微鏡 / 樹木年輪 / 赤松 / コンタミ / 磁気イメージング / 高感度分析 / 自然残留磁化 / 春目 |
研究実績の概要 |
SQUID顕微鏡の高感度化に向けて、SQUIDチップ周辺の断熱コーンなどの設計をやり直し、SQUID顕微鏡のオーバーホールを行った。その結果、サファイアロッド先端部分へのアクセスおよびSQUIDチップの装着は以前よりも容易となり、サファイアロッド・SQUIDチップの冷却効率は改善したが、液体ヘリウムの蒸発量は10L/4日から10L/3.5日程度と若干悪くなった。これらの作業を行い、SQUIDチップの装着し直しをしたところSQUIDチップと試料の距離を約190μmに縮めることができた。これは本装置でこれまでに実現された最も短い距離となる。また、SQUID顕微鏡のノイズ対策として電磁シールドを導入した。産業技術総合研究所構内で採取された赤松樹木について、表皮部分から3cmほど切り出したブロック試料をサンドペーパーで研磨し、アルコワックスを用いて60°C程度で加熱してスライドガラスに接着を行い、さらにSQUID顕微鏡が接触する表面部分をサンドペーパーで研磨した。この薄片試料に対して、自然残留磁化および10mTで交流消磁後のSQUID顕微鏡による分析を100μmグリッドにて行った。この分析では樹木年輪の生長する時期につくられた春目の部分に選択的に磁気ダイポールが見られた。昨年度の分析ではインクリメントボアを用いて樹木から抜いた試料の分析を行い、試料周辺分にコンタミと思われる信号が見られたが、上記春目部分の磁気ダイポールもコンタミの可能性があるので、慎重に分析と解釈を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はSQUID顕微鏡のノイズ低減、SQUIDチップと試料の距離の短縮などに注力をした。また、産業技術総合研究所の赤松の分析を進めたが、試料の準備状況などによりコンタミの可能性が否定できない。来年度に向けてクリーンブースと新たな試料作成手順の準備を進めているが、これらに若干時間がかかっている。また、外国人招聘研究者(短期)プログラムのためにマシンタイムとエフォートを裂く必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
電磁シールドに加えてSQUID顕微鏡周辺の磁気シールドの改善を行う。また、クリーンブース(クラス1000)を導入整備し、新たな試料作成手順を確立し、コンタミ対策を行った上で樹木に含まれる磁性鉱物の検出をすすめる。産業技術総合研究所構内の複数箇所で採取された赤松樹木8本のうち2本(1本は道路の近く、1本は道路から遠く)について優先的に、樹皮近傍から中心までの連続的な分析を自然残留磁化・非履歴性残留磁化・飽和等温残留磁化(1.4T)、そして飽和等温残留磁化着磁後に逆方向に-0.3Tを印加した後の分析を進め、道路を通行する車のエンジンからの磁性微粒子の影響の評価を行う。さらに、阿蘇火山・雲仙火山・桜島火山のいずれかひとつ適切な火山からの火山灰の影響を受けている樹木の採取を行い、過去の火山灰の影響を受けていると思われる試料の磁気イメージ測定を進める。これと同時並行する形で屋久杉試料の特に火山灰の影響を受けていると思われる部分を選び出して、試料を保有する研究者と共同研究をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に補助事業期間延長をすることとしたため、1年間の事業に必要な予算を次年度使用額として繰り越した。本件について、承認申請書を提出し受理済み。
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