本研究は、直接観測することが困難な外洋域の海上風乱流を高精度に観測する手法を開発して、外洋域の海面抵抗係数を見積もり、海面抵抗係数と波浪の関係を解明することを目的とする。海面抵抗係数は、大気と海洋間の運動量交換を支配する最も重要なパラメータの一つであり、海面境界過程である波浪との関係が長く研究されているが、外洋域の精度の高い現場データが不足していることもあって、確定的な結論は得られていない。平成30年度は、平成28年度に開発した漂流ブイ式観測システムを用いて、学術研究船新青丸により9月に三陸沖合の親潮域で (KS-18-11航海)、10月に紀伊半島沖合の黒潮域で (KS-18-13航海)、外洋域における海上風乱流と波浪の観測を実施した。そして、平成29年度に開発したアルゴリズムを使用して、海上風乱流の強度から海面抵抗係数を算出し、波浪パラメータとの関係を検討した。本研究期間中に得られたデータは、いずれも波高が2 m未満であり、外洋域としては低波高で、また、平均風速も5 m/s 以下の場合がほとんどであった。データが微風・低波高のケースに偏在し、海面抵抗係数と波浪パラメータとの間に明瞭な関係を見出すことはできなかった。しかしながら、本研究で新たに開発した漂流式観測システムは、これまで困難であった外洋域の海面抵抗係数を高精度に計測できることが実証されたので、今後、システムを強風・高波高域に漂流させる機会を得て、強風・高波高時のデータを取得し、外洋域の海面抵抗係数と波浪の関係解明につなげたい。
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