前年度に考案した季節別のリサイクル近似グリーン関数法ではパラメーターの季節依存性が複雑になり、解釈困難な状況であったため、今年度は通年でパラメーター感度を定義する数値グリーン関数を導入し、単純かつ効果的な対馬海峡モデルの改善方法を模索した。 対馬海峡の海底地形を調査する過程で、海峡横断フェリーの基準線が必ずしも最頻航路を代表していないことが判明し、最小二乗法によって基準航路を見直したところ、海底地形もまた大きく修正された。旧線と比較して全体的に水深が浅くなり(断面積が小さくなり)、対馬暖流の流量も2.2~2.4Svと従来値(2.65Sv)よりも下方修正された。 津軽海峡の海底地形もまた通過流に対して強く作用していることが分かった。複雑な海底地形を単純化した場合、日本海からの流出流のほとんど(90%以上)は津軽海峡を通過するが、実際には津軽海峡の形状抵抗の効果により、かなりの割合(全流出量の約1/3)が宗谷海峡に振り分けられている。 対馬海峡を模した単純地形の2次元浅水波モデル実験を繰り返し、特に海山の有無の差(海山に対する感度)に注目した。潮汐流を意図した振動流を与えたときは海山直上に感度があるが、定常流(通過流)を与えた場合は海山の斜面に影響が出やすい。海底地形に対する応答の強さは、定常流の方が大きかった。定常流の強さが30cm/sを超えると非線形性が強くなり、海山への感度(地形性渦)が下流へ押し流されて見えにくくなることも分かった。海山の標高に対する渦流の依存性は良好だったが、海山の半径を変化させた場合でも、発生する渦半径はほとんど変わらなかった。
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