通常は、風が吹いた地点で水蒸気が供給されるという仮定のもと、数値天気予報が行われている。しかし、現実の多湿な台風状況下では、水滴の蒸発には数十秒~数分間かかるため、波しぶきが発生したあと、台風の中心に向かう吹き込みで数キロほど運ばれながら、徐々に大気を湿らせていくと考えられる。台風の強さは水蒸気供給が起こる位置に鋭敏であることから、本研究では、これまで無視されてきた波しぶきの移動が、台風強度にどれだけ影響するのかを理想化された数値実験により評価した。本研究の結果、非常に猛烈な台風の場合、波しぶきの移動により、発達率が大きくなり準定常状態の台風の中心気圧も10 hPa程度低下することが分かった。
|