中津川市宮脇横川谷沿いの花崗岩石英を用いて、到達温度の推定方法について検討した。加熱実験(試料名:YT、YTB1)では最大180-440℃まで加熱を加えた。その結果、いずれの試料でも加熱温度の上昇にともない、感度は上昇した。YTBでは、未加熱の場合、感度は1.7程度であるが440℃で3.2程度まで上昇する。また、YTB1では未加熱の0.95が370℃で1.2程度まで上昇した。このことからOSL感度は加熱により確実に上昇するが、その程度は試料の依存性が大きいと考えられる。また、横川谷から採取した試料について、OSL感度変化の測定を行った。その結果、基盤花崗岩で感度変化値は高く0.95程度を示し、カタクレサイトでは0.6-0.7程度であった。また、粘土帯では、0.7-0.9程度であった。実験結果を基準とすると、天然試料のOSL感度の違いは、粘土帯がカタクレサイトより高い点で、粘土帯が加熱を被ったことを示唆している。しかし、基盤花崗岩の値がカタクレサイトより高い点は実験結果とは一致しない。これは試料のもつ感度変化の固有値に差があるためかもしれない。また、同一試料内で加熱による熱評価を感度値に基づいて行うことは可能であるが、異なる試料間では、充分に留意する必要があることを示す。 また、横川沿いの花崗岩体のOSL等価線量についても検討した。その結果、基盤花崗岩、カタクレサイトおよび粘土帯で顕著な差異が見られた。つまり、基盤花崗岩で5-30Gy、カタクレサイトで30-95Gy 、粘土帯で30-80Gyである。最も高い等価線量が期待される基盤花崗岩で低い値を示す原因は、フェーディングによることが示された。同時に、OSL成分は、MおよびS成分が中心であることが示された。一方、なぜ、カタクレサイトや粘土帯で、比較的高い等価線量値を示すのか不明で、今後の研究課題として残された。
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