研究課題/領域番号 |
16K13890
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮本 英昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00312992)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 火星 / 年代 / クレーター / 市民参加 / 活動度 / 惑星地質 |
研究実績の概要 |
地球外天体の表面年代を知るには、衝突クレーターの空間密度から推定する以外に現状では手立てが無い。もしある天体における現在のクレーター生成頻度が把握できたら、年代推定の精度は極めて正確になる。そこで本研究は数万人の一般市民の方々と共に、火星上で最近10年以内に形成されたクレーターを網羅的に発見しようとしている。この試みは換言すれば、火星に最近新たにできた地形を発見しようとしていることに他ならない。予備的な検討で、火星上の同じ場所で異なる時間に撮影されたCTX画像を比較することで、黒い斑点状の地形が形成されることがあることがわかっているので、これをダークパッチと呼び発見を試みる。なお常識的には火星には特段の活動度は無いものと考えられているため、こうしたダークパッチは全て衝突クレーターであると解釈される場合が多い。 まず今年度はデータとツールを整備し、多数の市民の方々に気楽にご協力いただけるようなマッピング作業環境の整備を行った。データについては当初予定通りCTX画像を利用し、これをヘッダ情報から重複域を抜き出しGIS上で比較作業が行えるようにした。これを用いて実際に宇宙ミュージアムTeNQにおいて来館者に実験に参加していただくこととした。その結果、約32,000人の方々に協力いただき、5800枚の画像を比較して新規にダークパッチが形成されているかどうか調査できた。これを研究者の目でさらに解析・検討した。こうした活動を通じて、先行研究で報告されていた11地点に加えて、新たに計238地点もの新たに形成された地形を発見することに成功した。これが全てクレーターであるとすると、従来考えられてきた単位面積当たりの1年間の生成率よりも約6倍ほど大きい。この途中経過は学会発表の形で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は今年度にマッピング作業の整備を行うこととしていたが、海外研究者の協力などにより、大幅に予定を前倒しして完了することができた。その結果、同一領域だが異なる時間に撮影された火星のCTX画像を、約3000組分抽出し、これをGISソフトウェア上で容易に比較できるように表示するよう工夫した。さらに遊園地内の宇宙をテーマとする博物館内において来館者が楽しんでこの作業が行えるように機器を配置し作業手順等のパネルを作り、同館のスタッフの協力を得られるような仕組みを整えることができた。その結果、既に3万人以上の方々に作業に協力していただくことができ、新たに約240地点もの黒い斑点(ダークパッチ)を発見することができた。
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今後の研究の推進方策 |
28年度に用意したデータセットとマッピングツールを用いて、作業を継続する。新たに形成された地形はクレーターと常識的には考えられているが、そうだとすると従来予想されていたクレーター生成率を大幅に上回る。この原因として、実際に小さな衝突体が火星に降り注いでいるという考え方もあれば、何らかの内因的な原因があるとする考え方もある。そこで今年度は、このどちらが正しいかを判断するために、ダークパッチの空間分布について統計的な検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外研究者との打ち合わせを見込んでいたが必要無くなった
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次年度使用額の使用計画 |
大変興味深い成果が生まれつつあるので、海外での成果発表に充てる。
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