微生物マット構造の形成を理解するため,今年度は主に現世試料および岩石試料の検討を行った. 現世試料については,インド東部・グジャラート州のCambay Basinで採集した砂試料を用いた.共焦点レーザー走査顕微鏡などの観察により,先行研究が微生物マット構造と認定していたものの多くは,蒸発作用による岩塩セメント化によって砂表面が体積膨張することで形成された構造であることが明らかとなった.これらの構造は再び海水にさらされると破壊されるため,堆積構造として残存することは期待できない.しかし,一部にはシアノバクテリアなど微生物によって形成されたものも見いだされた.それらは海水にさらされても構造が保持された. 岩石試料については,インド中部・マディヤプラデーシュ州の古原生界Gwalior層群に見られる砂岩および縞状鉄鉱層試料を用いた.砂岩試料に関しては,パリンプセスト・リップル,リンクル構造,ピティーリッジ,ピット,エレファントスキンなど,多様な微生物マット構造が見られたが,その成因の手がかりを直接見出すことはできなかった.一方,縞状鉄鉱層の層理面にも同様の微生物マット構造が見られ,それらは石英の微小ノジュールが地層中で成長することにより形成されていた.また一部には石英ストロマトライトが狭在していた.この結果は,砂岩の微生物マット構造についても同様の形成プロセスが当てはまる可能性を示唆している. 微生物マット構造の形成実験についても準備を開始し,シアノバクテリアの培養を進めた.
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