研究課題
地震は地殻の弾性歪みの反発作用であり,断層周囲の応力分布は地震発生メカニズム理解に必須な情報である.南海トラフ沿いの震源断層は付加堆積物中に発達している.堆積物は応力によって歪み硬化する特性があるので,岩石強度から震源断層周囲の応力場推定を試みた.紀伊半島沖の1944年東南海地震(Mw=8.2)の地震発生帯では,南海トラフ地震発生帯掘削計画が進行中である.海底下約5kmの震源断層を貫く計画であるが,そのうちコア試料が採取されるのは一部であり,ほとんどの区間では数mm程度の岩片試料のみが採取される.そのため整形作業なしに強度測定ができる針貫入試験を採用した.これは試料に針を刺して強制的に開口亀裂(いわゆるモードIクラック)を生じさせるものであり,試料の粘着強度が測定できる.この手法は,従来から土質工学分野にて簡便法として利用されており,その精密化を試みた.その結果,載荷と貫入量のログを詳細に解析する事で,従来法より高精度に測定できる事を見出した.この針貫入強度を一般的な一軸圧縮強度に換算するために,地表に露出する様々な堆積場や年代の堆積岩において,両方の強度試験を実施して,天然の砂岩における換算式を得た.この成果は,応用地質学的に実用性があるため特許出願を準備中である.IODP南海トラフ地震発生帯掘削計画の第338次航海により採取された,震源断層直上の海底下1000mから2000mのカッティングス試料の強度を測定したところ,堆積岩の強度は深くなるにつれて上昇する事がわかった.ただし浅い層よりも深い層の方が上昇レートが高くなっており,単なる地層の重みによる固結では説明がつかない.おそらく更に深部の震源断層が固着しており,それによってプレート沈み込みによる剪断応力が上部層に影響を与えているものと考えられる.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 18 ページ: 3185~3196
10.1002/2017GC006928