南海トラフ沿いの震源断層の上盤は堆積物から成る.堆積物は歪みによって硬化するので,岩石強度から震源域の応力場推定を試みる.国際深海科学掘削計画によって東南海地震(1944)の震源断層掘削が進行中であり,そこで得られる微小なカッティングス試料から,断層上盤地殻の強度断面を描き,そこから応力場を推定した.微小な試料の強度を測るために,針貫入試験を改良し,針貫入強度から粘着力への換算式を得た.これを南海トラフの試料に応用した.その結果,岩石強度は深くなるほど高くなることがわかった.ただし増加率は浅部より深部が大きい.底面断層が固着している場合,剪断応力は底面で最大で上方に減少するためだと考えられる.
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