研究課題/領域番号 |
16K13893
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
堀 利栄 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (30263924)
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研究分担者 |
山本 明彦 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (80191386) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 道後温泉 / pH値 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、(1) 東道後温泉及び道後温泉に設置したpH値と泉温の連続計測値の解析と、(2)解析結果の一部公表を主に実施した。 東道後温泉のセンサーヘッドの交換後、同温泉において長期間のpH値変動値を得ることが再び可能となった。同時に道後温泉においては、所有・管理者の許可を得て2016年11月よりpH値測定装置を道後温泉源泉に設置し、設置場所の気温に対応した記録室温度(ST)や源泉温度(TS)の変化と共に、pH値の観測・記録(PH)を行い、長期連続変動記録を取ることができた。得られた両温泉のデータから5分毎の記録を取り出し、複数の手法でスペクトル解析を行い、詳細な周波数分布を求めた。使用した方法は、FFT法、Marple法、存否法の3種類である。3解析法の特性を考慮した上で、今回はpH値、泉温など温泉水に特化したデータだけでなく、気温、気圧、歪、傾斜データなどの気象および地殻変動データも解析対象とし検討した。 FFT解析では PH, ST に、1日周期(M1)、1/2日周期(M2)、1/3日周期(M3)、1/4日周期(M4)の潮汐が明瞭なスペクトルピークとして検出され、Marple法、存否法による解析では、さらに1/5日周期(M5)~1/8日周期(M8)も検出された。これらのことから、PH, ST には明らかな日周帯以下の潮汐応答(高調波)が存在することがわかった。日周帯以下の潮汐応答は大気潮汐、気圧潮汐として知られており、気圧潮汐と気温変化周期とを比較するため、松山市内の野外気象データ(気温、気圧)、地殻変動データ(歪、傾斜)を入手し、同様の解析を行った。その結果、いずれにも M1~M7 の高調波が検出された。さらに歪・傾斜データでは4大(8大)分潮が検出されたが、現段階では、気温の潮汐応答が原理的なものか、気温センサーの気圧依存性によるものかは判断できない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究計画として、(1)新たな源泉における計測機器の設置、(2)データの解析、(3)温泉水の化学成分分析の3つをあげていたが、(2)のデータの収集と解析に人手と時間がかかり, (3)の化学分析には至らなかった。また、予算不足により(1)の機器の設置も難しくなっている状態である。しかしながら、(2)のデータ解析には本格的に取り組むことができ、共同研究者と検討した結果、これまで知られていなかった様々な知見が得られ(例えば、気温の潮汐応答など)た。平成29年度中には気温の潮汐応答の原因について回答が得られなかったため、平成30年度に持ち越しとなった。 しかしながら、平成29年度には本申請課題における途中経過の成果を、日本地質学会・支部会で発表することができ、ある程度の進歩を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度には、当初の方針を少し変更し、東道後温泉及び道後温泉の源泉測定を継続しつつ、(1) 気温の潮汐応答の原因の解明、(2) pH値と化学組成変化との関係の解明を主に目指す。ある程度の解明が進んだ段階で、成果の論文・公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた、源泉pH値測定装置を購入設置できなかったため、その予算分が消化できずにいるため。未使用額は、次年度pH測定センサーヘッドを購入する予算にあてる予定である。
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