研究課題
最終年度は、いくつか予想していなかった困難に直面した。重要なものを列挙すると、(1)初期のロットから得られた花粉ペレットの14C年代値が、葉化石から得られた14C年代に比べて数十年程度若く出る傾向があった。(2)セルソーターで処理した後の花粉ペレットが、おそらく静電気的なプロセスで媒質中に拡散し、遠心分離をおこなっても回収できない状態になった。(3)セルソーターで回収したはずの花粉数に対して、実際に回収できている花粉数が20%程度に留まっていた。(4)氷期に特徴的な大型の花粉が、セルソーターのサンプルラインに対して大きすぎ、ソーティングにかけられないことが判明した。以上の問題に対して、最終的に次のような解決を得た。(1)1本の遠沈管内だけでサンプルの前処理を完結できる方法を開発し、コンタミネーションの影響を徹底的に排除した。(2)後処理に限外濾過装置を導入し、遠心分離によらないサンプル濃縮に成功した。(3)セルソーターの偏向板の直下に特殊な漏斗を設置し、わずかでも偏向した液滴であればすべて回収できるようにした。(4)ステンレス製の小型石臼を開発し、サンプルの粉砕を試みた。ただしこの問題だけは、石臼が研究期間中に完成しなかったため、保留の状態に留まっている。大型の花粉の問題は、1万5000 BP 以前のサンプルに対してしか問題にならない。そこで、とりあえず1万~1万5000 BP の層準に集中し、確実に正しい値が出せるようになるまで技術の熟成をおこなった。最終的には、葉化石の年代と比較してまったく遜色のない(統計的に有意な差をみとめない)値を安定的に出せる技術を獲得した。なお、以上のプロセスを完了するまでに分析したサンプル数は、数え方にもよるが、おおむね50サンプルである。このうち、最終的にキャリブレーションデータとして採用できたのは10サンプルに留まった。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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