研究課題/領域番号 |
16K13897
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 卓 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (50272943)
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研究分担者 |
松岡 篤 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00183947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炭素同位体比 / 有機炭素 / チャート / 微量分析 / 質量分析 |
研究実績の概要 |
チャートで代表される極めて有機炭素に乏しい岩石は,全岩で有機炭素の同位体比を分析することが困難である.このことを解決し,ルーチンワークで有機炭素同位体比を測定するため,複数の手法の検討を始めた.まず,機器の改造である.有機炭素同位体比を分析するためには有機物を燃焼させて二酸化炭素に変換した後にヘリウムで連続フローとして押し流す形で質量分析装置へと導入するが,その際に既存の元素分析装置を用いるのが通常のシステムである.既存の元素分析装置はデッドスペースが大きいため,二酸化炭素がヘリウム中に分散してしまいピークが小さくなってしまうことが微量分析が困難になる要因の一つである.これを解決するには燃焼管や接続パーツなどの内径を小さくするなどすればよい.次年度にそれを実際に試すための設計図を作成した.もう一つの手法は,全岩で分析するのではなく,フッ酸処理を施したうえで分析することである.質量分析装置は敏感であり,酸には弱い特徴を持つため,酸の除去が完全にできているかどうかが重要である.本年度は蒸留ラインを工夫し,酸除去のためのフィルターとして工業的に利用される特殊な活性炭を吸着剤として使用するアイデアを構築し,来年度以降に実験する手はずを整えた.また実際の分析では二酸化炭素はごく微量で分析することになるが,装置の測定限界(分析に必要な最低量)の確認を行った.実際にチャートの同位体分析を行った研究例をレビューし,どのように分析値が影響を受けるのか等について総括し,日本地質学会の招待講演として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置の設計に時間がかかったこと,パーツの選定,吸着剤の選定にも時間がかかったこと,またこれを入手する方法を検討することに時間を要したことなどが原因である.また現状の質量分析装置の測定限界,通常の分析手法による測定可能な下限量の見積もりなどにも時間が取られた.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に検討した手法を実際に試す.まずは内径の小さなパーツを用いて元素分析装置の改良を進めてみる.ただし装置の改造は代表者が進める他の研究や,別のユーザーの装置利用などにも大きく影響を与えるため(当該装置は本研究のみに排他的に利用できるわけではない),時期を慎重に選ぶ必要がある.改造のために一定の時間を確保することができない場合は,酸処理をセパレートラインで行う手法を先に進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
装置の改造計画の立案およびセパレートラインの設計に時間を要したため,パーツ等の購入が当該年度に行うことができず,次年度送りになったため.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に立案した計画に従ってパーツの購入を進め,装置の改造やセパレートラインの構築(二酸化炭素の蒸留・純化のため)を進める.パーツの選定については専門業者や類似の改造の経験を持つ研究者から情報を入手していく.
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