研究課題/領域番号 |
16K13897
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷川 卓 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (50272943)
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研究分担者 |
松岡 篤 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00183947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機物 / 炭素同位体比 / 質量分析装置 |
研究実績の概要 |
有機炭素量(TOC)をわずか30ppm程度しか含んでいない遠洋性チャートのような岩石は,果たして有機炭素の同位体比を測定して,それを層序学的に応用できるのか?層序対比の補助ツールとして用いられてきた炭素同位体比層序を,遠洋性チャートに応用することによって日本などチャートが広く分布する地域での古海洋研究を格段に進展させることを目的として本研究を行ってきた.100ppm程度の有機物含有量があれば,導入カップ(錫箔)の工夫,標準試料の量を調整する,標準試料の分析数を増やして誤差の評価を厳密に行う,標準試料の量を変え,補正用の回帰直線を作成する,などの手法で十分分析することが可能であることが判ってきて,実際の分析に既に応用している. 一方,有機炭素含有量が30ppmのものについては,まだ分析が実現できていない.分析を実現するために,現時点で2つの方向性を検討している.まず1つめは分析装置の設備(元素分析装置部分)を専用に改造することである.デッドスペースをできるだけ少なくする方向で,JAMSTECの前例に従って燃焼管を特殊なものに置き換えして,還元管と統合するという戦略であるが,装置の汎用性を保つため,燃焼管の置き換え以外の改造は行わず,どこまで試料量を減らせるかを検討していく.また,2つめとして岩石粉末に弗酸処理を施して有機物を濃縮し,機器にダメージを与えないような活性炭を用いた処理を施したうえで装置に導入することで分析が可能になると考えている.これについては30年度に特に優先して進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
100ppmまでは既存の装置を改造せずに分析できることが判ったことは重要だが,目標の30ppmをルーチンワークとして分析できるようにはまだなっていない.そのための最も現実的な手段は弗酸処理試料の分析である.ところが研究室で2台保有する質量分析装置のうち,弗酸処理を施した試料はSercon ANCA 20-22を使用しなければならず(研究室の運用規則により),度重なる装置の不調が原因で進行が遅れている.現在は硫黄同位体比分析にセッティングされて順調に運用できているので,6月中にはセッティングを変更して最初の測定ができる見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
まずは弗酸処理試料を,ANCA 20-22 質量分析装置で測定することが,直近の目標となる.この分析が成功すれば,少なくとも30ppm有機炭素含有量の分析が,既存の設備で行いうることを示すことができる.そのために活性炭を用いた弗酸の吸着パーツを導入することを検討している.また極微量試料についても対応できるようにするため,弗酸処理後の試料をオフライン処理で蒸留精製する手法も検討中である.そこでも活性炭を用いたフィルターで弗酸を完全に除去する.これらを優先させるが,うまくいかない場合は,導入部分の燃焼管を細くし,還元管を燃焼管と統合するなどしてデッドスペースを物理的に減らす手法を試みる予定である.先行研究では,システムフローの多くの部分を改造しているが,本研究では汎用性を保つことが必要なので,燃焼管の変更だけでどこまで試料量(炭素量)を減らせるかに重点を置いていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析装置の不調により,修理・調整に時間を要した.そのため29年度に予定していた装置の改変(燃焼管の変更等)や,弗酸処理後の試料を用いた分析が行えなかった.そのための費用は次年度使用とし,30年度にこれらの実験を遂行するように予定を変更したため.
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