研究課題
有機炭素について,一般的な手法(元素分析装置直結型質量分析法)でその炭素同位体比を分析する場合,炭素換算で約50マイクログラム程度の試料が必要である.これをできるだけ減らし,微量の試料で分析することを目標の一つに設定した.特に,炭素の含有量がわずかしかない試料の場合,50マイクログラムの炭素を得るためには,濃縮をしない場合は大量の粉末資料が必要となる.例えば,0.01%の炭素含有量の場合,0.5グラムの試料を導入しなければならないが,一般の元素分析装置では一度に燃焼できる試料量としては多すぎる.従って,通常法では0.01%以下の試料の分析には技術的困難が伴った.そこで本研究では,通常法でどこまで炭素含有量が小さいものまで炭素同位体比が測定できるのか,を理解し,炭素含有量が少ない試料をいかに分析するのかを探究した.まず,標準試料の元素分析装置への導入量を減らして複数回測定し,どこまで装置の安定性が維持できるかを確認した.その結果,通常の20%程度(炭素換算で約10マイクログラム)未満になると,大きく分析結果がシフトし,安定性が悪いものの,炭素10マイクログラムまでは0.3‰程度の標準偏差の範囲内にとどまる事が解った.従って,炭素10マイクログラム程度を得ることができれば,標準試料も10マイクログラムに減らして試料と交互に3回程度測定することで実用的な結果を得ることができる事が分かった.一方,どの程度の粉末試料までなら含有炭素を完全に燃焼させて妥当な炭素同位体比を得られるかも検討した.炭素同位体比既知の標準試料を燃焼済の海砂粉末で希釈し,どの試料量までなら同位体比値が再現性を保つか,どこまで多量な試料を一度に元素分析装置に導入可能かを検討した結果,導入法を工夫することで100ミリグラムまでは再現性を担保できた.従って今回確認した手法で0.01%程度の試料まで分析が可能である.
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