研究課題
滋賀県彦根市東部の美濃帯ペルム系Lopingianのチャートには,半固結時の変形と考えられる角礫状の構造が認められ,異なる年代の放散虫混在群集が産することが報告された.それに加え,岐阜県関市板取村のペルム系チャートを検討し,ここからもチャート内部に半固結時の変形や液状化様の構造を見出した.岐阜県板取村ミオ谷の郡上八幡セクションは,GuadalupianからLopingianにかけての保存良好な放散虫化石を産するチャートからなる.Lopingianのチャートは層状~厚層状で,挟みの頁岩は薄い.Neoalbaillella ornithoformisおよびN.optima群集帯のチャートの単層の厚さは平均6cmであるが,10~30cmの塊状チャートの部分もある.緑灰色を呈し,ヘマタイトノジュールを含む.LopingianのAlbaillella 各種を豊富に産する.Guadalupianを特徴づける種がごく稀に,またFollicucullusが断続的に検出される.層理面に垂直な研磨片を作成し,チャートの内部構造を観察し,特異な内部構造を見出した.暗緑灰色チャートの内部に,層理面と斜交して,1~5cm規模で,不定形な形状をもつチャートが含まれていた.またmmオーダーで,放散虫殻が密集した珪質物が基質チャートを割って注入している構造が認められた.放散虫殻を多く含んだ物質の液状化により,半固結~固結状態のチャートを分断したように見える.郡上八幡セクションにおいても,チャート変形と物質の混合に伴い,異なる年代の化石の混合が生じたと考える.このような現象は,厚層状チャート,塊状チャートにおいて特に注意が必要かもしれない.変形メカニズムについては今後の課題である.複数の事例が確認できたことで,層状チャートの形成機構を改めて考える必要があることも問題提起できた.
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に滋賀県の事例を,平成29年度に岐阜県の事例を研究し,それぞれ成果を得ることができた.2つの地域でそれぞれに層状チャートの内部変形構造が確認できたので,順調に研究を遂行できていると自己評価できる.
平成30年度は,これまでと同様の手法(研磨面,フッ酸腐食面の観察)で,滋賀県および岐阜県のチャート試料を引き続き検討する.さらに,微細な組織について,電子顕微鏡による観察も組み込む予定である.また,現時点までの成果をまとめ,公表論文作成の準備を進める.
初年度に備品を購入せずに済んだ費用があったため,本年度に使用額が生じた.本年度にその一部を研究打ち合わせのため使用したが,余剰分が次年度使用額となった.論文作成に必要な物品(ソフトウエア,プリンター)の購入に充てる計画である.
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地質学雑誌
巻: 123 ページ: 163-178
Geodiversitas
巻: 39 ページ: 363-417