研究課題/領域番号 |
16K13900
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
栗谷 豪 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80397900)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マグマ / 水循環 / マントル遷移層 / 停滞スラブ / プレート内火成活動 |
研究実績の概要 |
本研究は、マントル遷移層起源とされる、主に中国北東部に分布する60 Maから0 Maまでの火山岩の解析を行うことによってマントル遷移層の含水量の時間変化を明らかにし、脱水に伴う停滞太平洋スラブからマントル遷移層への水のフラックスを決定することを目的とする。平成28年度は、若い時代の火山岩(Changbaishan地域・Kuandian地域(中国北東部)、長崎県福江島)を対象とした岩石学的記載、全岩主成分組成分析、全岩微量元素組成分析、放射性同位体比分析、FT-IRもしくは熱力学的検討に基づくマグマの含水量の推定により、各地域のマントル含水量とマントルの部分溶融度の推定を行う予定であった。 平成28年度は、予定通りにChangbaishan地域、Kuandian地域、福江島地域の岩石を対象に、岩石記載と全岩化学組成分析を終えることができた。そして特に福江島地域については、マントル含水量やマントルポテンシャル温度の推定に基づき、マグマが遷移層由来の流体の付加によるフラックス融解によって生成したことを明らかにし、さらに中国北東部を含めた停滞スラブ上の火成活動について、普遍的なモデルを提示するにいたった。この内容については、28年度中にLithos誌に投稿し、印刷されるに至った。このように、福江島について当初の予想をはるかに超える成果が得られたため、Changbaishan地域とKuandian地域についてはマントル含水量の推定には至っていないが、これらについては29年度の早い時期に達成される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定していた中国北東部のChangbaishan地域およびKuandian地域のマントル含水量は推定するには至らなかったものの、福江島について、論文の投稿および受理に至ったこと、また遅れ気味である中国北東部の2地域の研究についても、平成29年度の早い時期に目的が達成されることが確実であることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、古い時代(Shuangliao地域;60-30 Ma、Changbaishan地域;約20 Ma)、やや古い時代(長崎県小値賀島;1-0.3 Ma)の火山岩を対象に物質科学的解析を行う。そして28年度の成果と組み合わせて60 Ma-0 Ma のマントル含水量の時間変遷を明らかにすることにより、停滞スラブからマントル遷移層への脱水のフラックスを推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、平成28年度中に中国で野外調査を行う予定であったが、中国の研究協力者の都合で平成29年度に変更されたため、その分の予算が29年度に繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度からの繰越金は、平成29年度に予定されている野外調査で使用する予定である。
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