研究課題/領域番号 |
16K13902
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鎌田 誠司 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), その他 (30611793)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地球核 / 高圧 / ダイヤモンドアンビルセル / 金属ガラス / 非晶質物質 / 構造 / 密度 |
研究実績の概要 |
地球核は,液体である外核と固体である内核からなる.核は主に鉄からなり,それに加えて軽元素が含まれる.本研究では液体である外核の物理的性質を明らかにするために,当初高温下での鉄系液体の構造測定を行なうことを計画していたが,鉄を主成分とする金属ガラスの構造測定と密度測定を行ない,まず測定・解析法の確立を行なう.非晶質物質測定の前段階として結晶性試料を用いて密度測定法の確立を目指す.その後室温下での非晶質物質の密度測定を行ない,手法を確立できた暁には高温下での液体の構造と密度測定へと応用していく. 本年度は吸収法による密度測定の手法確立のために,結晶試料であるFeの密度を吸収法によって測定した.参照試料としてKCl,KBr,RbBrを用いた.3つの試料室を用意した金属ガスケットに,測定試料であるFe,参照試料であるKCl,KBrまたはKBr,RbBrを封入して測定を行なった.XRDによって各試料の密度を測定した.その後,吸収量を測定し,ベール・ランベルトの法則に基づいて密度を求めた.KClとKBrを参照試料として用いた場合にKClの透過度が高いために少しの揺らぎの影響が大きいことが判明した.そこで測定試料であるFeよりも低い透過度であるKBrと高い透過度であるRbBrを参照試料としたところKClの時よりも求められたFeの密度はXRDから求めた密度に近くなった.さらにそれぞれの参照試料のみで密度を求めた場合はKClを参照した場合ではFeの密度が大きくずれたが,KBrやRbBrではずれが小さくなった.このことから参照試料として吸収がある程度ある物質が適切であることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液体やガラスなどの非晶質物質のより精度の良い構造解析のために高圧下での密度を知る必要があるため,現在非晶質物質の密度測定法の確立に臨んでいる.これまでのところ粉末結晶の鉄を目的試料として吸収法を利用した密度測定法を行なっている.実験初期に用いた参照試料の吸収ぐらいの問題や実験手法における問題点などがあったため,吸収法で求められた密度がXRDから求められた密度よりも10%程度と大きくずれた.しかしながら参照試料の検討を行ない,より吸収をする物質を選定した.また,実験環境の影響を取り除いた結果,19 GPa程度までの測定において,XRDから求められた密度と比較して,最大でも4%以内のずれで,多くは1%以内のずれで求められた.また,低融点金属であるインジウムの測定にも参画した.室温での測定結果は,XRDから求められた密度と比較してほぼすべての測定において1%以内のずれで求めることができた. 以上のように,結晶性物質である鉄の密度を吸収法によって求め,XRDから求められた密度との差が4%以内になった.今後密度測定の精度を上げる必要があるが,おおむね密度を求めることに成功した.また実験環境による影響を取り除くことで参照試料を一つとしても密度を求められることがわかった.そのためより高圧力下での測定の目処が立ちつつある.したがっておおむね順調に進行していると判断した.今後はより高圧力条件までの測定を行ないつつ,非晶質物質の測定も行なう.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,室温下において常圧から19 GPa程度までの高圧下において鉄の粉末結晶を試料として吸収法による密度測定を試みた.これまでのところ,XRDから求めた密度と比較して4%以内のずれで吸収法による密度測定を行なえた.今後は,ズレを小さくするための測定手法を確立するために,データ収集時間やデータ収集法の最適化を図る.そして,参照試料を一つでも密度測定が可能であることがわかったので,より高圧下での測定を行なう.同時に,鉄系の金属ガラスを用いた密度測定を行なう.以上の室温下での測定に加えて,外熱セルを用いた低融点金属の液体密度測定にも挑戦していく. 密度測定を行なえたのちに,鉄系金属ガラスを例にしてXRD緩慢散乱取得を行ない,構造解析へ進めていきたい.そして構造解析から推定される密度と吸収法から得られる密度を比較し,構造解析から得られる密度の精度を検証する.
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