研究課題
本研究では、レーザー誘起ブレークダウン分光分析 (LIBS)とレーザーアブレーション ICP 質量分析 (LA-ICPMS)を組み合わせたタンデムシステムにより、様々な地質試料中の揮発性元素、主要元素、微量元素を同時定量するプロトコルを開発するおことを目的としている。昨年度は主に、(1) 珪酸塩及び金属試料の分析に用いる標準試料の入手、(2) LIBSによる主要元素及び揮発性元素のスペクトル採取、(3) LA-ICP-MSによる主要元素ー微量元素定量分析法の調整を行った。具体的には、米国地質調査所が配布している珪酸塩ガラス試料、産総研地質調査総合センターが配布している標準岩石粉末試料、申請者の過去の研究により酸分解/溶液化法により高精度データが既得されている各種無水珪酸塩鉱物(ざくろ石、単斜輝石、斜方輝石)、合成実験により微量元素が均質に注入されたFe-Ni合金試料を対象に、LA-ICP-MSによる主要元素ー微量元素同時定量分析及びLIBSスペクトルの採取を行い、機器セッティングや分析メソッドと各種元素の定量精度との関係を考察した。その結果、 無水珪酸塩ガラス/鉱物試料に関しては、分析元素全重量を 100%に規格化することにより、内標準元素を用いることなく良好なデータが得られることを確認した。一方、Fe-Ni合金試料に関しては、重元素の5-10%のロスが生じることが判明し、現在分析プロトコルの調整を進めている。また、粉末ペレット試料のアブレーションには種々の問題があることが判明したため、薄片岩石試料を対象に全岩化学組成定量分析を行う手法を探索した。その結果、比較的細粒な玄武岩標準試料(JB-2)においては0.5x0.5mm領域のマルチスポットアブレーションにより<20%の誤差で主要-微量元素の定量分析が可能であることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
珪酸塩鉱物の分析条件の設定は概ね終了した。一方、当初計画していた粉末ペレット試料のアブレーションには種々の問題があることが判明したが、薄片岩石試料を対象に全岩化学組成定量分析を行う代替手法を概ね確立できた。
今後は同様の手法を炭酸塩鉱物や含水珪酸塩鉱物など、揮発性元素を多く含む試料に適用し、LIBSスペクトルを用いた揮発性元素の定量精度を考察する。その後、含水鉱物や炭酸塩などを豊富に含む岩石試料の全岩化学組成定量分析ルーチンを確立する。
粉末ペレットを対象とした分析に困難が生じたため、当初導入する計画であった「めのう製自動乳鉢」の納入を延期した。そのため設備備品費として計上していた支出分を次年度に繰り越した。
研究打ち合わせのための外国出張旅費及び、当初予定になかった薄片試料を作成する必要が生じたため、分析補助あるいは外注費用として使用する予定。
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