研究課題/領域番号 |
16K13918
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤岡 慎介 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 教授 (40372635)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 強磁場 / レーザー生成プラズマ / 高エネルギー密度科学 / 実験室宇宙物理 / リコネクション / プロトンラジオグラフィ / スネールターゲット |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,金属薄膜を「の」の字型に巻いたスネールターゲットに,世界最大エネルギーを誇るLFEXレーザーを集光照射し,10 kTを越える強磁場を発生させることである.実験室内での10 kTを越える磁場を生成することが,一つのマイルストーンである. 高強度レーザーを物体に照射すると,レーザー電場によって電子が加速され,物体内に電流が流れる.電流は物体の表面を局所的に流れるため,物体の形状を変えることで,電流の形を制御することが出来る.スネールターゲットのように,円形に丸めた物体にレーザーを照射することで,円環電流を作ることが出来,円環電流の中心には強磁場が形成される.本研究は,スネールターゲット中に生成された磁場を計測し,また実験室天文学のこの強磁場の応用を探ることである. 厚さ20 micronの金属薄膜を直径300 micronの円筒状に巻いたスネールターゲットを作成した.スネールターゲットにLFEXレーザーを集光照射し,加速された電子がスネールターゲット内を伝播する様子を単色X線カメラを用いてイメージングした.ターゲット表面を沿って流れる電流の様子を可視化することに成功した.更に,スネールターゲットのすぐ側に,プロトン源を設置し,スネールターゲット中に生成された電磁場で偏向されたプロトンのパターンを,ラジオクロミックフィルムを用いて計測した.このパターンから5 kT程度の磁場が発生している可能性が明らかになったが,結論を得るためには,条件を変えた実験が不可欠である.また,スネール・ターゲット中に形成された磁場がリコネクションしたことによって加速されたと考えられる高エネルギープロトンの観測に成功した.このプロトンは光速の10%程度の速度を有しており,スネールターゲットを用いることで,相対論的リコネクション実験が出来る可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年2月に大阪大学レーザーエネルギー学研究センターのLFEXレーザーで磁場発生実験を行う予定であったが,深刻な装置トラブルのために,実験が延期された.そのため,今年度取得する予定であったデータを十分取得することが出来なかった.一方,計測器の準備等は予定通り順調に進んでいる.今回実施出来なかった実験は,7月に行える予定であり,この遅れは次年度中に取り戻すことが出来ると期待している.
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は.2016年度の後半に実施する予定であった実験を行う.本研究では,プロトンラジオグラフィー法を用いて,スネールターゲット中に形成される強磁場を計測することを目的にしている.しかし,プロトンビームの空間パターンが一様でないため,磁場の計測精度が悪いという問題を抱えている.空間的に一様なプロトンビームのパターンを得るための実験を行い,計測精度を向上させる. また,強磁場を得るためにはスネールターゲットの直径をもっと小さくする必要がある.2016年度の実験では,直径300 umのスネールターゲットを用いたが,これを100 umにすることで,磁場強度の増大を目指す.直径100 umのスネールターゲットについては,製作技術は確立しつつある.2016年度の実験で得られた,磁気リコネクションによるプロトン加速について加速メカニズムの確証を得るために,複数の条件で計測を行うと共に,磁気リコネクション起因と期待されるプロトンの更なる高エネルギー化も目指す. 強磁場の新しい測定方法として,X線スペクトルの強磁場中でのゼーマン分岐を利用した計測を行う.分光器については,2016年度に準備を完了しており,この分光器を用いて,ゼーマン分離を観測することで,プロトンラジオグラフィーとは全く原理が異なる方法で,強磁場を測定することが可能になり,本磁場生成法の信頼性を向上させることが出来る.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年2月に予定された実験が延期されたためである.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年2月に予定されたいた実験は2017年7月に実施する.この実験で使用するためのラジオクロミックフィルムやターゲット材料の購入に使用する.
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