研究課題/領域番号 |
16K13924
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 弘幸 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 教授 (00283664)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズモニクス / 逆光電子分光 / 深紫外光 / アルミニウム |
研究実績の概要 |
逆光電子分光法は、試料に電子線を照射し、この電子が試料の空準位に緩和する際の発光を観測することで、空準位状態密度や電子親和力などを直接的に観測する実験手法である。光電子分光法の逆過程とみなされることが多いが、信号強度は光電子分光にくらべて3桁から5桁も低いため、適用範囲が限られる。この信号強度を増強するのに金属のプラズモン共鳴を利用しようというのが本研究である。 これまでの逆光電子分光法では、金属のプラズモン共鳴波長よりも短い真空紫外光(波長130 nm程度)を検出するため、信号増強は不可能であった。研究代表者が2012年に開発した低エネルギー逆光電子分光法では、近紫外から可視光(200~400 nm)を検出するため、初めてプラズモン共鳴による信号増強が期待できるようになった。本研究では、さらに、プラズモン共鳴による増強効果を活用するために、電子線のエネルギーを掃引しながら一定波長の光を測定するisochromat modeにより測定を行う。また、今年度は作製が容易とされる銀ナノ粒子の局在プラズモン共鳴を利用した。 まず、既存の真空装置を活用して、金属蒸着装置を製作した。これを用いて、銀ナノ粒子の作製を試みた。基板には、シリコン自然酸化膜、石英ガラス、ITOガラスなどを用いて、膜厚や蒸着速度を系統的に変えながら、銀を蒸着した。一方、古い紫外-可視分光光度計を整備しプラズモンによる光吸収を確認した。これにより、プラズモンによる吸収が350 nm~400 nm付近に観測された。一方、別に行った原子間力顕微鏡による観測では、平均膜厚に応じて粒径20 nm~170 nmのナノ粒子ができていることが確認された。 このようにして作製した銀ナノ粒子について、測定波長を変えながら低エネルギー逆光電子分光を測定した。その結果、波長が350 nm付近で最大5倍程度の信号の増大が観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、深紫外光に対して大きな増強効果が期待できるアルミニウムのナノ粒子の作製を試みる予定であった。蒸着装置や紫外-可視分光光度計の整備に予想以上の時間を要したこと、また大気中でも安定で作製の容易な銀の蒸着膜についてテストを進めたところ、良好なナノ粒子が得られたため、銀ナノ粒子について研究を進め、一定の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
目標達成のため、以下の3つの方向を並行して進めていく。 (1)蛍光やラマンなどの信号強度の増強例から考えて、少なくとも10倍程度の増強は見込める。今後、銀ナノ粒子について、より大きな増強効果が得られるように、ナノ粒子の作製法を検討していく。 (2)有機分子をナノ粒子に付着させ、有機分子からの信号の増強を試みる。 (3)アルミニウムやインジウムなど、深紫外域にプラズモン共鳴波長をもつ金属について、ナノ粒子の作製とプラズモンによる信号強度の増強を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルミニウムのナノ粒子作製を予定していたが、今年度は銀ナノ粒子を中心に研究を進めた。銀ナノ粒子作製には既存の蒸着装置を活用できたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度から試みる予定のアルミニウムやインジウムのナノ粒子作製のために利用する。
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備考 |
所属名称は「千葉大学大学院工学研究院」に変更予定。
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