研究課題/領域番号 |
16K13925
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金森 英人 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00204545)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キラル分子 / マイクロ波発光分光 / SISミキサー / 位相敏感検出 / 誘導ラマン過程 |
研究実績の概要 |
本研究は「位相安定化レーザーによって誘起されたキラル分子からのマイクロ波輻射の位相敏感検出」と題して、光コムに位相安定化した複数のレーザー光源を用いた分子の誘導ラマン過程によって発生するマイクロ波を、量子限界の検出感度を有する超伝導(SIS)ミキサーを用いて位相敏感検出することのできる実験室分光システムを開発し、誘導ラマン過程を用いたキラル分子の振動・回転状態の量子位相を制御によって、光学異性体を分離してモニターする手段を確立するために、以下の課題に取り組んだ。 1)誘導ラマン過程に用いる2色の赤外レーザー光源として、2台の量子井戸半導体レーザー:QCLをシーダー光をファイバーアンプ増幅し、1個のOPO結晶を励起し、signal光を共通とすることによって、波長可変の2色のidle光を発生させることにも成功した。これらの赤外光を使って、CH4分子のv3バンドの振動回転準位の2重共鳴分光を試み、サブドップラー幅の共鳴信号の検出に成功した。これによって、コヒーレントなサブミリ波の発生のための第1段階を達成した。 2)位相敏感検出を可能とするマイクロ波検出部として、国立天文台の協力を得て150 GHz帯のSISミキサーを導入した。このSISミキサー素子をT=4Kの液体Heクライオスタット内にマウントし、Local光としては現有の位相安定化したミリ波光源を用いたヘロダイン検出システムを構築した。IFの信号帯域は1-2 GHzとし、10Kステージ上のHEMTアンプで増幅後、外部に取り出し、さらにdown conversion後、実時間スペクトラムアナライザーで処理し、結果をPCに取り込むようにした。位相検出の評価実験のために、位相安定化した2台のGun発振器を光源とする150 GHzの疑似信号光源を準備し、そのビート信号をヘテロダイン検出し、相対位相の検出能力を確認・評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の推進には国立天文台(三鷹)との協力体制をつくりのSISミキサー開発グループの全面的支援を得ることができたことが大きい。SISミキサーの取り扱い技術についても、本実験を担当する大学院院生共々、天文台職員の方からの直接指導をうけることができた。また、実験結果ついての研究打ち合わせを通して、多くの知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、マイクロ波の帯域をサブミリ波の600GHzとしていたが、天文台との議論を進めていて行く中で、まずは150GHzから研究を開始することとした。分子のマイクロ発光の強度は周波数の3乗に比例することを考慮すると、当初の600GHzとし64倍の信号強度の増加を狙うことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主力装置であるSISミキサーの導入に関して、国立天文台からの全面的な協力が得られたため、購入予定費用が軽減されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
SISミキサーを暫定的な150GHz帯から、本来の600GHzに変更に伴うマウント、ホーン、アイソレーター、低温アンプの購入費用とする。
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