研究課題
超短パルスレーザー光を液体内部に集光照射すると、その集光部近傍はプラズマが形成される。このプラズマ領域は周囲の液体によって閉じ込められるため、膨張が抑制される。本研究では、液相中で形成される超高密度・高圧なプラズマ状態を反応場として活用し、これまで爆轟法では直接合成が困難であった数ナノメートルサイズのナノダイヤモンドの合成技術を開発する。特に、アモルファスカーボン、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブなどの各種炭素材料を固体ターゲットとして、各種溶媒分子中で液相レーザーアブレーションさせる。液相レーザーアブレーションのメカニズム解明を行うとともに、合成されるダイヤモンド構造にホウ素や窒素などの不純物ドーピング技術を確立する。本年度は、酸化グラフェンを各種溶媒(水、エタノール、シクロヘキサン)に分散させた懸濁液にフェムト秒レーザーを集光照射させ、ナノダイヤモンド粒子を合成した。合成されたナノダイヤモンド粒子の構造は立方晶もしくは六方晶ダイヤモンド構造を持つことを確認した。特に、酸化グラフェン/水系で合成されたナノダイヤモンド粒子の発光スペクトルは、他の溶媒で合成されたものと異なり、ナノダイヤモンド本来の発光であると示唆された。さらに興味深いことに、固体の炭素源(酸化グラフェン)を含まない有機溶媒(エタノール、シクロヘキサン)のみにフェムト秒レーザーを集光した場合においても、同様のナノダイヤモンド粒子が生成されることをTEM観察により明らかにした。また、反応中間体と考えられるカーボンオニオンの生成も確認した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は(1)高効率ナノ粒子合成技術の開発、(2)ナノ粒子形成メカニズムの解明、の研究課題に取り組む予定であった。本年度までに研究課題(1)については、偏光方向を制御したフェムト秒ダブルパルス列の利用がナノ粒子生成に効果的であることを見出した。さらに研究課題(2)については、酸化グラフェンを固体炭素原料として利用することによって、溶媒分子に炭素を含まない水中でナノダイヤモンドを合成することに成功した。レーザー照射により溶媒分子も変質し、ダイヤモンド構造を含む蛍光性ナノカーボン粒子の生成が示唆されたが、本年度明らかにしたナノダイヤモンド本来の発光スペクトルの性質によって、ナノダイヤモンドの発光メカニズムを明らかにできた。次年度は本年度明らかにした発光スペクトルにより、ナノダイヤモンドの形成メカニズム解明に取り組む。
溶媒分子として、ラジカル反応を起こしやすいシクロヘキサン、還元作用のあるプロパノール等のアルコール、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、水などの溶媒分子がフェムト秒レーザー照射により、どのように解離するのかを明らかにする。溶媒分子自体の光誘起構造変化は、FTIRやラマン分光により評価する。さらに生成したナノダイヤモンド表面に吸着した官能基は、ナノテクノロジープラットフォーム事業の装置群(XPS、IPES、PYS)を活用して評価する。さらに合成したナノダイヤモンドの発光スペクトルを制御するため、ヘキサメチレンテトラミンやアダマンタンなどの有機分子を溶媒に分散した溶媒をターゲットとして液相レーザーアブレーションを行い、合成されるナノダイヤモンドにBやNなどの不純物ドープを目指す。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 4件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 13件、 謝辞記載あり 11件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 17件、 招待講演 6件) 産業財産権 (2件)
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