研究課題/領域番号 |
16K13931
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金 水縁 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (50758886)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光増幅 / バイオセンシング / 蛍光プローブ |
研究実績の概要 |
(1)環境変化に応じて異なるレーザー発振ができるレーザー粒子の開発 アミノ基(-NH2)が表面に修飾されている市販のポリスチレン粒子とアミノ基を修飾した硝子粒子に、アミノ基と選択的な反応性を有するNHS エステル基が修飾されているpH応答性蛍光プローブ(SNARF1)をドープした。pH変化によって、SNARF1の蛍光スペクトル変化(580→640 nm)は成功的に観測できたが、レーザー発振を意味する蛍光スペクトルの幅の減少は観測できなかった。また、同じ反応性粒子(ポリスチレン、硝子粒子)に色素が修飾された核酸をラベルし、標的タンパク質を認識することによって発光もしくは消光するレーザー粒子を制作した。しかし、タンパク質の検出によって増幅された誘導放出を誘起することまでは成功したが、完全な光増幅までは至らなかった。したがって、現在の粒子デザインではレーザー発振が難しいことがわかった。その理由として、当時、我々の共焦点顕微鏡に搭載されているピコ秒レーザーの低出力(< 1 μJ/pulse)と粒子の低いドープ量が挙げられる。
(2)レーザー発振顕微鏡のための顕微鏡装置改良 以上の実験から、微小球の光増幅を引き起こすためには、微小球レーザー発振を引き起こすと知られている‘数十μJ/pulse’以上の出力を持つ光源を導入する必要が示唆された。したがって、平成28年度には、532-nm ナノ秒レーザーを購入し、共焦点顕微鏡装置に搭載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、二種類のレーザー発振が可能な超発光性センサーの制作を予定していた。しかし、一つ目のpH応答性センサーの制作過程中、レーザー発振を実現する上にセンサーのデザインと現在の顕微鏡装置を改善することが必須不可欠であることが新たにわかった。しがたって、平成28年度には、顕微鏡装置の改良について中心的に行った。現在、必要な装置のセットアップがほとんど仕上がっている段階であり、平成29年度には、研究が順調に進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、改良した顕微鏡の快適化、より密に蛍光プローブを修飾した超発光センサーの開発、そしてレーザー発振顕微鏡の構築を行う。 (1)ナノ秒レーザー搭載共焦点顕微鏡の最適化:平成28年に構築したナノ秒レーザー搭載共焦点顕微鏡の最適化を行う。本研究提案であるレーザー発振顕微鏡の実現のためには、追加されたナノ秒レーザーとフェムト秒レーザーをよく調節する必要がある。したがって、平成29年には光学部品を適切に設置し、パンプ光であるナノ秒レーザーの焦点を微小球の大きさにできるだけ一致させるように広げられる。続いて、フェムト秒レーザーとナノ秒レーザーの焦点を合わせるように顕微鏡装置を最適化する。 (2)高密に蛍光色素でドープされた微小球センサーの作成:平成28年には、簡便さを考慮し、既にアミノ基が修飾されたポリスチレン粒子を購入し微小球センサーを制作した。しかし、その粒子の最大ドープ量でも光増幅を引き起こすことは不可能であった。したがって、平成29年には直接アミノ基をポリスチレン粒子にドープする方法を開発する。 (3)細胞内酸素濃度の2 次元視覚化ができる「レーザー発振顕微鏡」の構築:改善した顕微鏡装置と超発光性センサーを用い、細胞内励起状態の生成を2 次元イメージで視覚化できる「レーザー発振顕微鏡」を構築する。レーザー色素としてAlexa488(λabs/λfl = 495/515 nm)を、酸素濃度検出のためにTPP を選び、これらの色素をドープしたレーザー粒子を合成する。さらに、2 つの光源が導入された広域蛍光顕微鏡にナノ秒の時間分解能を持つICCDカメラを搭載し、細胞内励起状態の視覚化を目指す「レーザー発振顕微鏡」を構築する。続いて、レーザー粒子を細胞内に導入し、細胞内で酸素濃度を視覚化する実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年に予定していた二種類の微小球センサーを制作している途中、顕微鏡装置の改善が優先的に行わなければならないことがわかった。したがって、平成28年には顕微鏡の改良を中心的に行ったため、試薬購入および学会発表で必要な旅費の支出が発生しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(平成29年)は、顕微鏡最適化に必要な光学部品、高密に蛍光色素をドープできる微小球センサーの制作に必要な試薬・実験器具に使用する。
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