研究課題/領域番号 |
16K13932
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福井 賢一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60262143)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面・界面 / イオン液体 / 界面電気二重層 / 原子間力顕微鏡 / 界面赤外分光 |
研究実績の概要 |
本研究は,申請者が開発した電気化学界面の局所構造化を評価する顕微解析手法(EC-FM-AFM)と金属イオンの溶媒和状態を検出する界面赤外分光を併用し,イオン液体を用いた二次電池のエネルギーキャリアとして期待されるLi+,Na+, Mg2+, Al3+について,界面電気二重層の局所構造が溶媒和の強い金属イオンの進入といかに調和しながら拡散する場を形成するのかを明らかにするための方法論の開発を目的としている。 H28年度は,「イオン液体/電極界面での構成イオンの動的挙動,電気二重層形成のMDによる解析」および「EC-FM-AFMによる界面イオン液体の構造化の変化とその応答時間の評価」の2点について主に取り組んだ。 前者の界面MD計算については,グラファイト電極や有機半導体C60単結晶電極について,イオン液体と接する電極最表層に電荷を振り分けることにより界面に実効的な電位を印加する方法論を確立し,電極と接する界面イオン液体の分子配向や運動性を評価することで,印加する電位の大きさと極性によって異なる起源により秩序構造化が進行することを見出した。また,その構造化が及ぶ電極からの距離の違いが生まれる要因も検討した。これらの解析結果は,並行して実施してきたEC-FM-AFMによる界面イオン液体の構造化の強さに関する電位依存性を定性的に説明できる。 後者の界面イオン液体の構造化については,グラファイト電極,C60結晶電極で同じπ軌道が張りだした炭素電極であっても界面イオン液体の構造化の度合いが異なること,界面にπ平面が露出しないルブレン,ペンタセンなどの有機半導体結晶では界面イオン液体がほとんど構造化しないことが明らかとなった。さらに,電極電位を印加するといずれの界面でもイオン液体の構造化は進行するが,その電位印加の履歴(ヒステリシス)や応答速度に大きな依存性があることが分かってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面分子動力学(MD)計算については,グラファイト電極や有機半導体C60単結晶電極について,イオン液体と接する電極最表層に電荷を振り分けることにより界面に実効的な電位を印加する方法論を確立し,電極と接する界面イオン液体の分子配向や運動性を評価することで,印加する電位の大きさと極性によって異なる起源により秩序構造化が進行することを見出し,その構造化が及ぶ電極からの距離の違いが生まれる要因も検討した。 電気化学界面の局所構造化を評価する顕微解析手法(EC-FM-AFM)を用いた界面イオン液体の構造化の解析では,同じπ軌道が張りだした炭素電極であっても界面イオン液体の構造化の度合いが異なること,界面にπ平面が露出しない有機半導体結晶では界面イオン液体がほとんど構造化しないなどの差異が明らかとなった。また,電極電位を印加することによるイオン液体の構造化や,その電位印加の履歴(ヒステリシス)や応答速度が電極の種類によって大きくことなることが分かってきた。 以上の成果について,学術論文2件,総説3件,国際会議での招待講演を複数含む発表29件として公開した。さらに,本研究の内容を含む成果に対して,日本化学会の学術賞を授与された。
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今後の研究の推進方策 |
イオン液体を用いた二次電池のエネルギーキャリアとして期待されるLi+,Na+, Mg2+, Al3+について,これらのイオン液体溶液としての電解液がつくる界面電気二重層の局所構造について,引き続き界面分子動力学(MD)計算と電気化学周波数変調AFM (EC-FM-AFM)を用いた解析を進める。さらに,これらのエネルギーキャリアの界面近傍での溶媒和構造や電子状態を界面敏感赤外分光法(RAIRS),新しい手法として開発中の界面遠紫外分光法(EC-ATR-FUV)で,またその拡散過程について角度分解X線光電子分光法(ARXPS)を用いて解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に使用する比較的高額の消耗品について,グループ内の在庫消費を待ってからの発注するタイミングの問題であり,H29年始めから当初計画に従って執行していく。大きな計画変更はない。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度始めから当初計画に従って,消耗品を中心とした物品費と旅費として執行していく。
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備考 |
研究で得られた最新の成果概要を世界に向けて発信している。
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