昨年度報告書に記載したように、当初の目的である固体水素を用いた超分解能分光装置の作成段階で、いくつかの問題が生じた。一つ目は対物レンズを極低温環境下に入れた時の光学系の微調整が困難なことと、固体パラ水素にタイトスポットで集光した場合に微細なクラックが生じ、同じ位置に集光し続けるとシグナルが劣化することである。このため(1)クラックの問題を回避するため極低温クライオ中における液体水素をターゲットとした計測系の構築、(2)回折限界の微小スポットでのコヒーレント制御を行うための新たな対象として室温で近接場光を扱えるブロッホ表面波=励起子強結合状態を対象とした超分解能コヒーレンス制御系の開発、に分けて行うことにした。(1)に関しては固体水素の作成に用いた銅製のセルを用いて液体水素の作成を試みたが、インジウムシールから液体水素が断熱層に漏れてしまい、気化した水素によって断熱が破れてしまう現象が何度も観測された。この際、水素が突沸する危険が伴うためあまり推進せず、(2)回折限界スポットでのコヒーレント制御を行うための新たな対象として室温で近接場光を扱える対象系としてブロッホ表面波=励起子強結合状態を対象とした超分解能コヒーレンス制御系の開発、を重点的に行った。 ブロッホ表面波を保持する構造として平面DBR構造を想定し、転送行列を利用した反射スペクトルシミュレーションプログラムを作成し、最適な周期酸化膜層数と予想される分散曲線の計算を行った。得られた角度依存反射スペクトルシミュレーションの結果に従い、スパッタ装置を用いて周期酸化膜構造の作成を行った。試料の評価のために全反射型顕微分光装置を自作し、反射スペクトルをk-spaceでイメージ測定し、反射スペクトルに生じるディップの角度の確認を行った。計算の結果予想されるディップの角度と実験結果には誤差があり、現在その原因を究明している。
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