研究実績の概要 |
医薬品や農薬、有機機能性材料で重要な役割を果たすトリフルオロメチル基の位置選択的な導入反応の開発は、近年とても注目されている変換反応の1つである。しかし、医薬品や農薬、有機機能性材料に多く含まれる6員環ヘテロ芳香環への、位置選択的なC-Hトリフルオロメチル化反応は従来困難であり、ほとんど報告例がなかった。研究代表者らはすでに、従来報告例のなかった6員環ヘテロ芳香族化合物の2位およびベンジル位選択的なトリフルオロメチル化に成功し、研究成果を学術論文として報告している(2位選択的なトリフルオロメチル化:Nat. Commun. 2014, 5, 3387;ベンジル位選択的なトリフルオロメチル化:Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 10263)。本研究では、平成28年度に、かさ高いLewis酸を用いて6員環ヘテロ芳香環を求電子的に活性化しつつ、2位を立体的に保護することで、6員環ヘテロ芳香族化合物の4位選択的なトリフルオロメチル化反応を初めて達成することができた(J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 6103)。本反応では、トリフルオロメチル化のみならず、ペンタフルオロエチル化やへプタフルオロプロピル化のようなパーフルオロアルキル化、ジフルオロメチル化、ペンタフルオロフェニル化も進行させることができた。また、銅触媒を用いることで、N-(8-キノリニル)ピバルアミドの5位選択的なトリフルオロメチル化反応の開発にも成功し、学術論文として報告した(Org. Biomol. Chem. 2016, 14, 8092)。本反応は、様々な官能基が存在してもそれらの官能基を損なうことなく、5位のみで進行した。
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