研究課題/領域番号 |
16K13951
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉橋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50432365)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ソレノイドコイル / オリゴピリン / 電気伝導 / らせん不斉 / π共役系分子 |
研究実績の概要 |
これまでに、有機分子をダイオードやトランジスタなどの能動素子として応用する研究が盛んにされてきたが、分子デバイスを実現するためには未だ解決が必要な課題もある。例えば、分子デバイスを設計する際には、能動素子と受動素子の組合せにより回路を設計する必要があるが、従来の単分子エレクトロニクス材料を考えた場合に、重要な受動素子のひとつである「ソレノイド型コイル」として機能する分子が未だ開発されていないといえる。それは、3次元的に共役した「らせん」分子の設計・合成の難しさ、光学活性体として合成・単離してくる必要性、電気伝導の異方性制御など、他の単分子エレクトロニクス材料にはない課題を有しているからである。そこで本課題研究では、π共役らせん不斉オリゴピリンに着目し、その合成を検討した。また、オリゴピリンの末端ピロール環(α位炭素)が多様な反応性を有していること、触媒反応などによる官能基化が可能であることを活用することで、多様な長さやコイルピッチを有する分子ソレノイド型コイルが作製できることを明らかにすべく研究を実施した。当該年度の研究実績として、ピロールとアルデヒドの脱水縮合反応および高希釈条件下での酸化反応により、5量体オリゴピリンであるペンタピリンが収率良く得られることを見だした。さらに、X線単結晶構造解析から、ペンタピリンがらせん構造を有していることを確認することに成功した。また、ペンタピリンに臭化鉄を反応させることにより、ペンタピリン鉄錯体が得られることを新たに見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施における鍵化合物である「らせん」構造を有するペンタピリンの効率的合成手法の確立を達成している。また、その構造をX線単結晶構造解析により明らかにすることに成功した。さらに、ペンタピリンに臭化鉄を反応させることにより得られた、ペンタピリン鉄錯体のSPring-8 BL14B2におけるエックス線吸収微細構造解析(XAFS測定)、および核磁気共鳴装置による磁化率測定により、その構造を明らかにすることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
らせん不斉を有するペンタピリンを得るために、ラセミ混合物からの光学分割を実施する。その方法として、ペンタピリンへの不斉補助基の導入によるジアステレオマー分割法を検討する。また別法として、キラルカラムを用いたラセミ体ペンタピリンの直接的光学分割を実施する。得られた光学活性体に関しては、電気・磁気的性質を各種分光測定などを用いて明らかにする。また、理論化学計算(SAC-CI法)により励起状態の電子構造に関して詳細を調査する。
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