現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ポルフィリンメゾオキシラジカルが極めて安定な中性ラジカルであることを発見した。この発展として、1,4-フェニレンや1,3-フェニレンで架橋したメゾーヒドロキシポルフィリン2量体を合成して、PbO2で酸化したところ対応するジラジカルを得ることができた。いずれも独立したジラジカルであり、キノノイド電子構造を取らないことがわかった。SQUIDで固体磁性を調べたところ、1,4-フェニレン架橋ジラジカルは独立したジラジカルと一致した磁性を示したが、1,3-フェニレンで架橋ジラジカルは異常に小さな磁性を示しており、何らかの反磁性相互作用が推測されるが、まだ結晶構造が明らかになっておらず、原因がわかっていない。また、メゾーメゾ結合メゾーヒドロキシポルフィリン2量体をPbO2で酸化したところ、フリーベースやニッケル錯体ではキノノイド構造をとり閉殻化合物であったが、亜鉛錯体では安定なビラジカルになり、ポルフィリンの中心金属の種類によって、ジラジカルーキノノイドの制御が可能で有ることがわかった。 メゾオキシポルフィリンの酸素をチッソに置換したメゾアミニルポルフィリンラジカルの検討を行った。まず、環縮小ポルフィリンで有るメゾアミニルサブポルフィリンの合成検討を行った。メゾーフェニルアミニルラジカルはラジカル周りの立体保護が不十分であり、不安定化学種であることがわかった。そこで、2,4,6-トリクロロフェニルアミニルラジカルを合成したところ、通常の条件下で、安定に取り扱うことのできるラジカルで有ることがわかり、サブポルフィリンの高いラジカル安定化能力が実証できた。次に、ビスーサブポルフィリニルアミニルラジカルを合成したところ、この化合物も非常に安定な化学種で有ることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
1,3-フェニレンで架橋ジラジカルは異常に小さな磁性を示すが、その原因がわかっていないが、不思議な現象で非常に興味深い。1,3-フェニレンで架橋ジラジカルの結晶構造を明らかにして、反磁性相互作用の理由を明らかにする。 電子吸引基であるペンタフルオロフェニルを置換したメゾーオキシニッケルポルフィリンを合成し、その酸化により、対応するメゾーオキシラジカルの合成を検討する。次に、この化合物にピリジンを配位させ、ニッケルをハイスピンにすることで、二つのスピン間の磁性相互作用を調べる。結晶構造解析のみならず、固体磁性の精密な検討を行う。また、光異性化可能な部位をもつピリジン誘導体を合成して、光照射による高スピンー低スピンスイッチングが実現できるかどうかの検討を行う。 メゾーアミニルサブポルフィリンの成果を踏まえ、メゾーアミニルポルフィリンの化学を遂行する。対称性の高い平面型アミノポルフィリン3量体を設計合成、そのPbO2酸化によりトリアミニルラジカルの合成に挑戦する。メゾブロモポルフィリンと1,3,5-トリアミノベンゼンとの芳香族求核置換反応により合成し、その酸化反応を詳しく検討する。この場合も、結晶構造のみならず、固体磁性の精密な測定を行う。これまでの研究では、中性なアミニルラジカルでは、ジラジカルでも短寿命であり、トリラジカルはより不安定し、短寿命になることが予想できる。しかし、予備的な実験では、相当に安定なトリラジカルが生成している模様で、極めて有望である。
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