研究課題/領域番号 |
16K13956
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
神川 憲 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40316021)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 軸不斉 / ビアリール |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に引き続き軸不斉を有するホスフィノビアリール類の触媒的不斉合成の検討を行った。昨年度において、キラルアミノ酸配位子を活用することで、最高87%eeにて、対応する軸不斉ホスフィノビアリール類を合成することに成功している。しかしながら、その収率は20%程度と低く、一層の改善が必要であった。そこで、温度、溶媒、パラジウム錯体、添加剤の効果について精査したところ、銀塩とカルボン酸の量比を変えることによって、若干の収率改善を行うことができた(34%)。しかしながら、まだ十分満足できる収率とはいかなかったことから、引き続き、基質の改変も考慮に入れて検討を継続して行っている。一方、得られて生成物に対して、2当量のフェニルグリニヤール試薬を作用させたところ、ジエチルホスファイトの1つのエチルエステル基が、フェニル基に置換された生成物が単一のジアステレオマーとして得られることを見出した。この際、リン原子上にはP-キラリティーが発現している。さらに,生成物が単一のジアステレオマーとして得られたことから、先に導入した軸不斉の影響でフェニル基がジアステレオ選択的に導入されたと考えられる。したがって、もう1つの別のアリール基を続いて導入することができれば、軸不斉に加えて、リン原子上の不斉を併せ持った非常に興味深い配位子を合成できる可能性がある。また,グリニヤール試薬を入れる順番を変えれば、リン原子上に構築される不斉中心の立体化学を入れ替えることができると予想される。そこで、2つ目の別のアリール基の導入を様々なグリニヤール反応剤を用いて検討した。しかしながら、現時点において、ジエチルホスファイトの残る1つのエチルエステル基を効率良く、アリール基に変換するには至っていないため、引き続き検討をおこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年間において、目的とホスフィノ基をdirecting group に用いたC-H結合活性化反応による不斉非対称化において,かなり高い不斉誘導が可能であることを確認できた。しかしながら、依然反応効率が悪く、それらを改善するにあたり、さらなる検討が必要である。また、得られた生成物の二次利用を期待して、変換反応にも取り組んだ。その結果、可能性を示唆する結果を得ている。また、実験を担当している共同研究者の不慮の事故により、予定していた行程から遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き反応効率の改善をおこなうとともに、得られた生成物を不斉触媒配位子として活用することにより、触媒的不斉合成するという多重不斉反応を実現することが最終目的である。そのためにも、引き続き、生成物の効率的な変換法の開発を目指して検討をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定外に研究の進捗が遅れ、そのために予定していた物品の購入を行っていない。今後は、研究の進捗に合わせて、化合物合成に向けた物品を購入する予定である。
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