昨年度に引き続き、軸不斉を有するホスフィノビアリール類の触媒的不斉合成の検討を行った。今年度は、C-H結合活性化反応により得られた軸不斉ホスフィノビアリール類のジエチルホスファイト基を他のアリール基に変換することを検討した。これまでの検討から、得られた生成物に対して、2当量のフェニルグリニャール試薬を作用させたところ、ジエチルホスファイトの1つのエチルエステル基がフェニル基に置換された生成物を単一のジアステレオマーとして得ることに成功した。このことにより、ホスフィン上にP-キラリティを導入することができた。そこで残るもう1つのエチルエステル基を別のアリール基で置換すべく、様々なグリニャール試薬を用いて反応を行った。その結果、アリールグリニャールを用いた場合には、置換基の種類に関わらず、反応が進行しなかった。しかしながら、アルキニルグリニャール試薬を用いた場合にのみ、対応する付加体が少量ながら得られてくることが分かった。その際に、単一のジアステレオマーとして得られたことから、選択的に反応が進行したことがわかった。生成物の絶対立体配置には至っていないが、おそらくP上の立体化学は、反転していることが予想される。立体的に比較的小さなアルキリニルグリニヤール試薬が反応することが分かったが、これを触媒反応における配位子として活用するには、アルキニル基をアルキル基もしくは、アリール基に変換する必要である。そこで、水素雰囲気下、還元反応を行ったが、金属触媒水素化はどの触媒を用いても反応が進行しなかった。そこで、環化反応を行いアリール基に変換できるかどうかを検討した。その結果、カチオン性ロジウム触媒を用いた場合に反応の進行が確認できたが、単離同定には至っていない。今後、生成物の同定についてさらに検討を行う予定である。
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