研究課題
本研究では、有機ユニットの自己組織構造形成を基軸として、二重らせん構造をもつ金チオラート直鎖配位高分子の精密合成を実現し、らせん間での動的なAu- Au相互作用に立脚した刺激応答材料に向けた基盤を確立することを目指す。昨年度までの研究では、ポリエチレングリコール鎖を末端に有し、長鎖アルキル鎖をスペーサーにもつチオールを用いると強い発光性を示す配位高分子種が生成することを見いだした。この発光は金-金間でのaurophilic相互作用に由来すると考えられるため、単純な直鎖配位高分子の一本鎖ではなく、二重らせん構造など高次の超構造が形成されるものと考えられる。さらにサイズ排除クロマトグラフィーによる検討を行ったところ、想定されるよりも極めて巨大な分子量を有することが示唆された。そこで本年度は、得られた配位高分子のサイズ、構造に関する知見を得るために原子間力顕微鏡(AFM)による検討を行った。その結果、発光性を示す配位高分子種は、アスペクト比1.4程度の異方的な形状をもつディスクリートなコクーン様構造体が規則的に配列した特徴的な構造が確認された。興味深いことにAFM上でのコクーン状構造体のサイズはほぼ均一であった。これらの特徴は溶液中での動的光散乱で観察された結果と良く一致したことから、溶液中でもコクーン状構造が保持されているものと考えられる。一方、発光を示さない配位高分子は、明確な構造を示さず流動性があるアモルファス的な挙動を示した。従ってポリマー鎖は特定の高次構造をとっていないと考えられる(ランダムコイル構造)。これらの結果から、発光性の配位高分子はアルキルパッキングおよび金-金間の相互作用によって特定の超構造を形成していると結論された。
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