レオロジーを利用したアキラル分子を構成要素とするキラル空間の構築:溶媒中にブラウン運動に打ち勝つことができる程度の大きさを有する長鎖状分子やオリゴマーをマトリックスとして高速撹拌することにより、マトリックス分子を配向させ、その中でマトリックス分子を鋳型として金属イオンと架橋配位子を錯形成することにより、配位結合を駆動力としたキラル空間を有するネットワークを形成することを検討した。 配位子としてTPHAP(申請者が独自に開発した相互作用部位として水素結合や配位結合が複数可能な広い芳香族配位子)を用い、ヨウ化銅キュバン型錯体を金属コネクターソースとして、様々なマトリックス分子を共存させてネットワーク化を検討した結果、空隙率が80%の細孔を有するP212121のキラル空間群を示す結晶を得ることに成功した。構造解析の結果,ヨウ化物イオンがCu(I)で構成される三角形の上下をキャップしている両三角錐型のCu3I2がコネクターとして働き,それにプロペラ状にTPHAPが配位することによりキラリティ―が発現していることが分かった.さらに,同じ金属ソースとTPHAPの代わりに4座のピリジンメタン型配位子を用いることにより,non-centroのI-4の空間群を有したヨウ化銅の一次元の鎖状構造が含まれるネットワークの構築にも成功した.現在のところ実験装置の制限上,撹拌スピードや温度勾配の制限の問題などがあり今後さらに注意深くキラリティの発現の起源を検討する必要があるが,表題の目標に近づいた成果だと言える.
|