研究課題
金属ナノ粒子、ナノクラスターはバルク金属、金属錯体とも異なる物性を示すことから新規金属材料として注目を集めている。その中でも金ナノ物質は生体イメージングとしての応用が期待されてきたが、生体環境下での安定性が大きな課題であった。これまでにN-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)を用いることで金表面、金ナノ粒子を極めて安定化させることを見出している。本研究では安定性に優れたNHCで修飾された新規金ナノクラスターの創製を目指した。本年度は二座NHC配位子を有する金錯体からのボトムアップ合成による金ナノクラスターの創製を行った。昨年度に二座NHC配位子を用いることで温度やチオールに対して非常に安定な金ナノ粒子を得ることに成功している。この知見を基に、アルキル基で架橋したイミダゾリウム塩を合成した。次に塩基存在下、塩化金ジメチルスルフィド錯体と反応させることで二座NHC-金錯体を得た。得られた金錯体を水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元することで、金ナノクラスターを得ることに成功した。質量分析(ESI-TOF)によって、得られた金クラスターは金原子を14個、二座NHCは5つ有するものが主生成物であることがわかった。興味深いことに、得られた金クラスターはアセトニトリル中80Cで1日加熱してもクラスター構造が保たれており、温度に対して極めて高い安定性が示唆された。また金クラスターはオレンジ色の蛍光を示すことも明らかとなった。生体内での安定性評価には至っていないが、本研究の目標である安定な金ナノクラスターの創出に向けた非常に重要な研究成果が得られたと考えている。
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Nature Chemistry
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