研究課題
メタンからメタノールへの酸化反応は最も難しい化学反応の1つである。本研究では、メタンのC-H結合をメチルラジカルの強力な水素引き抜き能を利用することでメタノールへの酸素酸化を達成しようというこれまでにない全く新しいタイプの反応開発をすることを目指した。実験は次のような手順で行った。まずメチルコバロキシムを、文献記載の方法にて合成した。合成したコバルト錯体をメタンと酸素の混合気体雰囲気下アセトニトリル中で光照射を行った。その結果、微量のメタノールがの生成が確認された。反応機構は次のように想定している。光照射によってコバルト(III)錯体のCo(III)-C結合が開裂する。ここで生成するメチルラジカルは溶媒殻内で元の錯体に戻ろうとするが、メタン濃度が高い条件下では、フリーのメタンから水素を引き抜き、その時点でフリーのメチルラジカルが生成する。このメチルラジカルは分子上酸素を即座に捕捉されることによって、メチルペルオキシルラジカルが生成する。このメチルペルオキシルラジカルは、大過剰に存在するメタンからさらに水素を引き抜き、メタンヒドロペルオキシドを与え、それが分解することによって最終生成物であるメタノールへ至る。ここで水素引き抜きによってさらにもう一分子のメチルラジカルが生成し連鎖的に反応は進む。本反応を進行させるためには、溶媒の選択が必要不可欠であった。通常メチルラジカルは、有機溶媒のC-H結合を切断し水素を得てメタンを生成、あるいは、エタンへの二量化反応によって不活性化する。そこで、本研究では、溶媒としてフルオラス溶媒を用いた。フルオラス溶媒は、芳香族系と脂肪族系のものが現在市販されているが、メチルラジカルの付加を防ぐために、脂肪族系のフルオラス溶媒を中心に検討を行った結果テトラデカフルオロヘキサン(フロリナートFC72)が最も有効であることを見いだした。
2: おおむね順調に進展している
28年度の研究計画として提案したとおり、有機コバロキシムを用いてメタノールが生成物として得られる段階まで達した。
有機コバロキシムを用いてメタノールが生成物として得られる段階までは当初の計画通りだが、収率がまだ低くメチルコバロキシムの分解によってもメタノールが得られるので、現状その区別は難しい状況であるので今後さらに条件検討を行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (26件) (うち国際共著 26件、 査読あり 26件、 謝辞記載あり 25件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 産業財産権 (1件)
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