研究実績の概要 |
本研究では、モノマー重合/ポリマー解重合スイッチング系の確立のために、様々なクロモフォアおよびスペーサーを用いてデザインされた多数のモノマーを合成し、分子変換がバルク特性へ直接的に反映し易い媒体である水系溶媒中でも、モノマー/ポリマースイッチングを行える分子の設計へと進み、ミセルや凝集体の形成/可溶化を酸化還元で制御できる系を開発することを目的としたものである。 ビフェニル-4,4'-、フルオレン-2,7-ジイルなどの骨格にビス(4-アミノフェニル)エチニル基を導入した化合物は酸化によって容易に重合し、オリゴカチオン種を安定な塩として与える一方、その還元では解重合を伴い出発物であるジアルケンを定量的に再生することが明らかとなった。また本研究を通じて、これまで電子供与体合成にはほとんど利用されてこなかったパーフルオロフェニル基を持つ化合物群の特性が明らかとなった。モノマー重合/オリゴマー解重合というサイクルという酸化還元による結合形成切断ばかりでなく、アリールエチニル基の置換というSNAr反応よって、π共役系伸長が特性の優れた色素骨格の形成に有効であることも示された。例えばジアリルエテニル基を持つパーフルオロフェニル体は、分子量が小さいダイマーのジカチオン種でさえも、電荷移動的な共役系を利用した近赤外の吸収体を持つ。このものは、生体内での酸化還元応答や光化学療法へ利用できると考え、初期の計画と合わせ、近赤外の吸収体を持つ色素を利用したin vitroおよび in vivoでの検討を共同研究により行った。具体的には色素をナノカプセルに閉じ込めて生体へ投与し、生体中で硫化物イオン特異的な還元反応を行わせた。有機エレクトロクロミズム系とナノカプセルに共存する近赤外発光性ポリマーとのFRETを鍵としたセンシングは前例のないものであり、今後殺ガン細胞特性への展開が期待される。
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